古くて新しい動物園 Melbourne Zooの取り組み

2018 / 1 / 29 | カテゴリー: | 執筆者:Yukiko Mizuno

冬休みに、家族でオーストラリアを旅行しました。目的地は南部ビクトリア州の、オーストラリア第二の都市メルボルン。今回は、メルボルンの中心街からほど近いメルボルン動物園の環境の取り組みについてご紹介します。

メルボルン動物園は1862年開園のオーストラリアで最も歴史の古い動物園で、Zoos Victoriaという非営利団体が運営しています。Zoos Victoriaは動物園として初めて、オーストラリアの「カーボン・ニュートラル認証」を取得しました。照明や冷暖房の省エネ、小規模太陽光発電、有機性廃棄物のコンポスト化、チョウ園のガラスの性能向上などの取り組みを通して、年間2,140トン(CO2換算排出量)の排出を削減しています。


https://www.zoo.org.au/about-us/environmental-sustainability

実際に訪れてみると、園内では、こうした温暖化対策のほかにも環境問題への積極的な取り組みが随所に見られました。

例えばゴリラのエリアのThey’re Calling on Youというキャンペーン。
携帯電話などの電子機器に用いられる希少金属タンタルを含む鉱石コルタンの採掘がゴリラの生存に深刻な影響を及ぼしていることを伝えるとともに、携帯電話のリサイクルプログラムへの参加を働きかけるプログラムです。動物園の入園者が、ゴリラの保護を遠いアフリカの国の保護活動としてではなく「自分事」として捉え、行動を起こすよう促しているのが印象に残りました。

Zoos Victoriaではこのほかにも、野生動物を守るための行動を呼びかけるさまざまな取り組みを行っています。
・When balloons fly, seabirds die(海鳥が死亡する原因となる風船を野外で飛ばさない)
・ Love your locals(絶滅の危機にある在来種を守る)
・ Don’t palm us off(オランウータンを守るためにヤシ油の認証ラベルの導入を求める)
・ Seal the loop(魚釣りをする人たち用にリサイクル箱を設置する)

動物園を訪れたことをきっかけに、動物を通して、市民や観光客が自分たちの暮らしと地球環境のつながりを学べる工夫。そして自ら行動を起こすのを後押しするしくみ。こうした取り組みが日本やほかの国々にも広がっていくといいと思いました。

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余談ですが、取り組みの内容もさることながらタイトルの言葉使いも絶妙です。翻訳者としてはその点でも楽しい学びがありました。

When balloons fly, seabirds die:詩のような押韻。
Love your locals:言葉の頭韻。
Don’t palm us off:palm off(押しつける)とpalm(ヤシ)の二つの意味。
Seal the loop:Seal(閉じる)という言葉に、アザラシ(seal)をはじめとする海洋生物を守る取り組みであるという意味も含ませている。

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