Translators in Sustainability 伝わるコミュニケーションへの道
Johnson & Johnson の真剣に人を想う表現
企業の社会的責任やサステナビリティについて、先進的な取り組みで知られるJohnson & Johnson社(J&J)。
今回は、同社のHEALTH FOR HUMANITY REPORT 2016での表現をご紹介します。
J&Jといえば、Our Credo(我が信条)。
70年以上も前の1943年に起草された時から、顧客、従業員、社会、株主などとの関わり方について述べられています。
特に、従業員についての「性別を問わず一人ひとりを尊重する」という精神は
現在のJ&Jに着実に受け継がれ、トムソンロイターのダイバーシティ・アンド・インクルージョン・インデックスや、DiversityIncのダイバーシティTop 50にランクインするなど、同社はダイバーシティについて高い評価を得ています。
そのような社風が感じられる表現が、今回のレポートの中にも。
Our culture allows our employees to change the world, without changing themselves.
私たちの企業文化は、従業員が自分自身を変えることなく、世界を変えることを可能にする。(仮訳)
ダイバーシティに関するセクションの冒頭で、このように言い切ってしまうところに、
何よりも「人」を尊重することに対する意思の強さが感じられます。
さらに、次のように続きます。
We are advancing a culture of belonging where open hearts and minds combine to unleash the potential of the brilliant mix of people at Johnson & Johnson.
私たちは率直に思いや考えを組み合わせて、J&Jの多様な従業員が見事に融合する可能性を解放する場にいるのだと実感できる文化を促進しています。(仮訳)
多様な個人が、そのままの自分でいながら、
それぞれがもつ経験や特徴を組み合わせることで、
世界をより良いものにする力にしていこう。
そんな多様性への配慮にあふれる企業文化の中で、
従業員の方々は安心して自分の力を最大限に発揮でき、
結果として、同社はビジネスでも素晴らしい成果を出せているのではないでしょうか。
さて、「人」を優先事項として位置づけている同社ですが、
それは従業員だけに留まらず、社会全体の文脈においても同じです。
Our Global Community Impact focus is to support and champion the people on the front lines who are at the heart of delivering care.
あらゆるケアの提供の中心に立ち、その最前線で働く人々に対し、私たちの「グローバル・コミュニティ・インパクト」チームは、支援を提供し、彼らのために積極的に動くことを重視しています。(仮訳)
この動詞の “champion”は、日本語では「擁護する」という表現におさまりがちですが、
似た意味をもつ “support”と比べ、「支援する人のために、より積極的に動く」という
意味合いが強くなります。そして、以前のブログでもご紹介した手法で、”support”の後に”champion”という言葉を付け加えて強調しています。
ヘルスケア製品を提供する企業として、世界で医療や介護、保育など
あらゆるケアのために活躍する人々を積極的に支援していきたい。
そんな企業の考えが読み取れるJ&Jらしい表現だ、と感じました。
最後に、このレポートの中で繰り返し登場する重要フレーズ、”change the trajectory of health for humanity”。
自社を惑星と捉え、本来であれば不動の「軌道」を、人々の健康を追求するために、変える。
人と健康における真のグローバル・リーダーとして、今後どのような変化を見せてくれるのか、その活躍に期待したいと思います。
(リサーチャー 岡山奈央、二口 芳彗子)