Translators in Sustainability 伝わるコミュニケーションへの道
進化する育児休暇制度―オーストラリア、スウェーデン
Photo by Cindy Shebley
先日Sustainability Frontlineで紹介した、ダノンの育児休暇制度。
primary/ secondaryの表現は、オーストラリアの育児休暇制度でも使用されており、
主たる保育者(primary carer)に最長18週間、第二保育者(secondary carer)に
最長2週間の最低賃金を国が保障しています。
2017年12月、同性婚が正式に合法化されたオーストラリア。
出産休暇(maternity leave)と養子縁組休暇(adoption leave)を主たる保育者向け休暇、
父親の育児休暇(paternity leave)あるいはパートナーの育児休暇(partner leave)を
第二保育者向け休暇と表現しています。
さらに、豪州コモンウェルス銀行は、第二保育者の休暇を1週間から4週間に拡大。
これは、国の保障と別に同社が設けている期間です。
(Commonwealth Bank of Australia: Corporate Responsibility Report 2017, P35)
一方で、次のような意見も。
‘Primary’ Caregiver Benefits Sound Gender-Neutral but Aren’t — It’s time to get beyond the idea that a child has one parent who is more responsible than the other. (The Atlantic)
(仮訳)「主たる」保育者手当という表現は男女中立に聞こえるが、そうではない。
子どもの一方の親が、他方より多くの責任を担うという考え方から抜け出す時が来た。
記事の内容は、子どものいる家庭の60%に「働いている二人の親」がいて、
企業は、その二人が子育ての責任を「等しく」担うよう奨励するべきである、
というものでした。
育児にはprimaryもsecondaryもない。
確かにその通りです。
primary/ secondaryという表現は、性役割を区別しない、
つまり女性がより多くの責任を担うべきという固定概念にとらわれない表現として
よい面があります。
けれども、親のどちらかがprimary carerになるという選択肢に加え、
二人で等しく育児を担うという選択肢も同じくらい必要なのだと気付かされました。
スウェーデンの育児休暇は、出産休暇(maternity leave)の規定はなく
育児休暇(parental leave)のみ。
子ども一人につき両親が各240日、育児休暇の権利を有します。
240日のうち90日は相手へ譲渡できず、どちらかの親しか取得できません。
この譲渡できない日数は、2015年までは60日でしたが、
2016年から90日に増加しました。
これは、「育児のコアタイム」がさらに30日長くなった、ということ。
どちらの親も少なくとも3カ月しっかりと育児に関わるように、と促す
制度上の改定です。
より充実した育児休暇制度を目指す、各国、そして各企業の取り組み。
今後の進化が楽しみです。
(翻訳コーディネーター/翻訳者 佐藤 靖子、二口 芳彗子)
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