Translators in Sustainability 伝わるコミュニケーションへの道
要点から入る英語、背景から入る日本語?
「日本語をそのままの順番で訳したら伝わらないから、大胆に編集しました」
先日、Web掲載記事の英訳をお願いしたネイティブの翻訳者が、
そう言って2つのファイルを送ってきました。
1つは和文に沿って翻訳した「英訳」、
もう1つは英訳を記事として再構成した「英文」です。
でも、その「英文」を日本語に照らしてチェックしようとしたところ、
冒頭にいきなり日本語にはまったくない情報が書かれていました。
(流石にこれは創作しすぎでは?)と思いつつ、とりあえず先に進みます。
そして、記事を締めくくる最後の文にきたところでハッとしました。
冒頭の文は、いちばん最後の文の要約だったのです!
翻訳を読みにくくする理由のひとつに、もとの言語と翻訳言語の文章構成、
組み立て方の違いがあります。
英語には英語、日本語には日本語の文章の書き方のルールがあって、
それが守られていない文章はネイティブにとって読みにくい(読んでもらえない)
文章になってしまいます。語法や文法がいかに正しくても、です。
英文は「序論(Introduction)」→「本論(Body)」→「結論(Conclusion)」
の順に展開するのが基本です。なにを今さら!と思われるかもしれませんが、
日本語では「起承転結」に代表されるように違った文章の組み立て方をします。
日本語を頭からそのまま訳していくと英文読者になじみのある展開にならないため、
ポイントが伝わりにくくなってしまうのです。
英文ではまず、序論で全体のざっくりとしたまとめを書いて読者の興味を引きます。
ここで結論にも軽くふれてしまいます。そのため、最初の段落を読めば、
何について書かれた文章なのかが分かります。逆にそれがはっきりしないと
読者は混乱し、続きを読んでくれません。英文では書き出しがとても重要なのです。
次に本論で、最初に述べたポイントの具体的な根拠や事例を紹介しながら、
持論を展開していきます。1つのパラグラフには1つのトピックだけを書き、
話題を変えるときには段落も変えます。そのため、日本語の段落構成のままでは
英文として不自然なこともあります。
そして最後に、結論を書きます。
結論では、序論で述べたこと、主張したいことを言葉を変えて繰り返します。
最初にご紹介したWeb記事では、英文の意図をしっかりと説明する
申し送りを添えて提出しました。
その第一文がコチラ。
“Pinpoint specific local problems. Promote sustainable local development.
Pave the way for productive corporate growth. That’s how XX company…”
日本語の第一文はコチラです。
「XX社は19XX年、XXメーカーとしてXX県で創業。その後…」
英語では最初に「要点」を説明し、日本語では最初に「背景」を説明しています。
「逐語訳」はもちろん、「逐段落訳」でも通じない。
伝わるコミュニケーションへの道を目指して、修行はまだまだ続きます。
Photo by Sebastien Wiertz