Translators in Sustainability
Human Driver or System? 自動運転、6つのレベル
“google-driverless-cali” by Sam Churchill is licensed under CC BY 2.0
渋滞に巻き込まれてしまったとき、スイッチ1つで前方の車との車間距離を一定に保つクルーズコントロール機能。実際に体験すると、予想以上に精度が高く、まるで前方の車に乗っているかのような加速やブレーキのタイミングで、ちょっと車酔いしそうにさえなるので驚きです。それでも、渋滞中に追突した車を見た経験もあるので、より安全に移動できるようになったと感慨深くもあります。
この運転支援機能を含め、システムが車を運転する「自動運転」を訳す機会が増えてきました。調べてみると、self-driving, autonomous driving, driverless などなど、バリエーションがたくさん。しかし「自分で運転する」?「自律運行」?「運転者がいない」と言い切っていいのか? 運転支援機能を持つ自動車は? と疑問が。
違いが分かりやすいのが、専門家や技術者、業界関係者の世界的な組織 SAE International のJ3016基準。運転環境を人間のドライバーあるいはシステムのどちらが監視するのかによって大きく青と緑の2グループに分け、さらに4分類の運転機能をどちらが担うのかにより6段階で定義しています。
まったく自動運転機能なしの状態をレベル0、運転支援機能をレベル1 とし、2,3…と上位ほどシステムの果たす役割が大きくなります。この国際組織の資料で使われている automated driving / driving automation は、使える範囲も広く一般名称に相当します。
では、メディアなどで使われているその他の表現 self-driving, autonomous driving, driverlessは、どのレベルにあたるのでしょうか。
参考になったのが、ドイツHERE社の自動車部門ヘッドのラルフ・ハートウィッチ氏のコラムです。欧米中心にクラウド地図を基盤とする位置情報サービスを提供するHERE社に在籍する同氏によれば、レベル2以上は、システムが運転判断を行うという意味でautonomous driving、self-drivingと呼ぶのが適切なのは、レベル4-5の自動運転機能を持つ場合。
さらに、driverless と呼べるのもレベル4-5だが、実際には自動運転機能のオン・オフスイッチを操作する人が必要、と言葉を濁しています。Google社は、冒頭の写真にもあるように、driverless carと銘打っていますが…。
今年4月、警察庁と国土交通省は、自動車業界団体に対し、現在実用化されている「自動運転」機能が「運転支援技術」で、運転者に代わって車が自律的に安全運転を行う完全な自動運転ではないことを自動車ユーザーに注意喚起するよう要請しました。SAEのJ3016基準でのレベル1(運転支援)は、レベル5(完全自動)ではありません、ということです。
運転に責任がある(accountable)のは、あくまで「人間の」ドライバー。自動車保険や自動運転の関連法規の翻訳では、運転者=driverではなく、human driverと訳す必要も、今後出てくるでしょう。