Translators in Sustainability 伝わるコミュニケーションへの道
Decentralized 廃水も分散管理へ
Photo by SuSanA Secretariat
先のブログでもご紹介したUN World Water Development Report 2017(国連世界水発展報告書2017)。その主要メッセージを読んで私の印象に残ったのは、廃水利用の取り組みに関する以下の一文でした。
Barriers to the use of reclaimed water and recovered by-products are often economic and regulatory, rather than technical.
(試訳)再生水や回収された副産物の利用を妨げているのは、技術的な問題よりも、経済的、規制的な問題である場合が多い。
例えば、廃水からエネルギーや栄養素を回収する技術は開発が進み、コストも徐々に下がっていますが、市場機会やスケールメリットなどの理由から、広域的な普及には至っていません。
また、廃水を飲用以外の目的で再利用する場合、水質は飲用よりも低くても問題ありませんが、そうした水質での利用を促進するには柔軟な規制・制度的な枠組みが必要です。
こうした制約があるなか廃水利用を進める方策の一つとして、報告書では分散型の水管理・廃水利用(Decentralized water management and wastewater use)を取り上げています。分散型システムには、設備投資費や維持管理費を抑え、現地の状況に合わせたシステムを構築できるという利点があります。
例として紹介されているNon-potable Water Programは、米国の連邦レベルでの規制がないなかで、カリフォルニア州サンフランシスコ公共事業委員会が開始した取り組みです。雑排水や雨水などを回収・処理するシステムを設置して、水洗トイレや灌漑などに用いることを義務付けるもので、新たに建築される規模の大きい商用施設や住宅に適用されます。
分散型(decentralized)という言葉は、再生可能エネルギーの文脈でも用いられますが、分散型システムは廃水の分野でも世界的に増加傾向にあり、大規模な集中型システムと組み合わせることのできる選択肢と考えられています。この分野の新たなキーワードの一つとして、今後も注目していきます。