Translators in Sustainability 伝わるコミュニケーションへの道
強調表現を効果的に seriously and sincerely

Photo by Caleb Roenigk is licensed under CC BY 2.0
「大事なことなので2度言いました」は、あるテレビCMで有名になり、現在ではブログやツイッターでも頻繁に見かけるフレーズです。通常、当社では簡潔かつコンパクトな英文をご提案しますが、ときには「2回繰り返す」表現も取り入れています。
ある企業のCSRウェブサイトの英訳ご支援で、以下の訳文をご提案しました。
…all customer queries are treated seriously and sincerely.
(お客様の声を真摯に受け止める)
seriouslyとsincerelyは「真剣に」「誠意を込めて」という似た意味を持つ言葉ですが、重ねて使うことでその姿勢を強調して伝えることができます。
他にも、すでに慣用句として使われている強調表現があります。例えば、「一人ひとりの」「ありとあらゆる」という意味の each and every。
…the places where we play as children leave a lasting impression on each and every one of us.
(小さいころに遊んだ場所は私たち一人ひとりの心の底に残ります)
eachやevery単独で表すこともできますが、小さいころの記憶は一人ひとり違うけれども、すべての人の心に残るものだ、と情緒的に伝えるには、この強調表現がピッタリだと思います。
また、Fordの Sustainability Report 2015/2016 のトップのメッセージに使われている front and center。
Whether we are building a strong business, delivering great products, innovating new approaches to mobility or contributing to a better world, our priorities of operating a business that delivers sustainability and growth will always be front and center.”
(試訳:いかに立派な企業を築きあげても、素晴らしい製品を届けても、新たなモビリティを導入しても、より良い世界のために貢献しても、サステナビリティと成長をもたらす事業を行うことが我々にとって常に最も重要なことなのです)
front and centerも「(活動・興味・関心などの)中心に」という意味の慣用句ですが、ここでは、前出のWhether~、そしてprioritiesも併せて使っていることから「何よりも大切なこと」という意味合いで用いられ、インパクトのある文章になっています。
このような強調表現は多用せず、ここぞというときに使うことで効果が発揮されます。
まずはお客さまが伝えようとしているメッセージにしっかりと耳を傾けて、より効果的な情報発信のお手伝いができるよう、日々鍛錬を重ねていきます。
以前、このブログでも似た意味の言葉が重なって使われている例として Sustained and sustainable の表現をご紹介していますので、併せてご覧ください。
(翻訳コーディネーター/翻訳者 山本 香)
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