Global Risk Landscape―異なる視点で見るリスク(1)

2017 / 5 / 8 | カテゴリー: | 執筆者:二口 芳彗子 Kazuko Futakuchi

世界経済フォーラムのグローバル・リスク報告書2017の冒頭にさまざまなリスクを異なる切り口で表現している4つの図があります。共通しているのは、リスクに関する以下の5つのカテゴリー。それぞれ異なる色が割り当てられています。

色    カテゴリー
青 Economic risks    経済
緑 Environmental risks 環境
黄 Geopolitical risks 地政学
赤 Societal risks 社会
紫 Technological risks 技術

Global Risksは、報告書のAppendix A冒頭で下記のように定義されています。

A “global risk” is defined as an uncertain event or condition that, if it occurs, can cause significant negative impact for several countries or industries within the next 10 years.
グローバル・リスクとは、今後 10 年間に発生した場合には複数の国や産業に多大な悪影響 を及ぼす可能性のある、不確実な事象または状況である。

今回は4つの図のうちの2つをご紹介します。

図1は、リスクとトレンドの相互関連性マップです。外側のグレイのアイコンがトレンド、内側のカラフルなアイコンがリスクで、どちらも大きいほど重要となっており、収入・貧富の格差拡大、気候変動、社会的対立の増大、サイバースペース依存の拡大、高齢化社会という5つのメガトレンドを含めて合計13のトレンドとさまざまなリスクとの関係性を表しています。また、トレンドとリスクのアイコンを結ぶ線が太いほど、関連性が強いことを表します。


Fig. 1: The Risks-Trends Interconnections Map
Global Risk Report 2017, World Economic Forum

例えば、収入・貧富の格差拡大(Rising income and wealth disparity)のトレンドは、社会不安の深刻化、大規模に起こる選択の余地のない移住、都市計画の失敗などの社会的リスクだけでなく、失業や不完全雇用、経済危機などの経済的リスクにも関連しています。

図2は、2007-2017年のリスク見通しの変化です。 上段は起こりうる可能性(likelihood)、下段は影響(impact)のトップ5の変化を表しています。

起こりうる可能性の変化では、 2011年に緑の環境リスクが上位を占め、その傾向は2017年まで続いています。影響の変化では、起こりうる可能性と比べてゆっくりですがやはり環境リスクが2011年から上位を占めるようになったほか、2015年から経済リスクに代わり社会リスク、地政学的リスク、環境リスクが上位を占めています。

2017年の起こりうる可能性が高いリスクトップ5は上から、異常気象、大規模に起こる選択の余地のない移住、大規模な自然災害、大規模なテロ、大量のデータ詐欺/盗難事件。2017年の影響が大きいリスクトップ5は上から、大量破壊兵器、異常気象、水危機、大規模な自然災害、気候変動緩和策・適応策の失敗となっています。

私個人は、 2005年に米州を襲ったハリケーン・カトリーナ以来、自然災害が加速度的に増えたという感覚があり、図2は非常に腑に落ちた、と言うよりもその感覚が図式化されたようで、インパクトの大きい資料です。

次回は引き続き、図3、4をご紹介します。

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