Translators in Sustainability 伝わるコミュニケーションへの道
Neonicotinoid Pesticides(ネオニコチノイド系農薬)

Photo by Charles Bell
ネオニコチノイド系農薬は、世界で広く使われている農薬です。
水溶性で植物全体に浸透し、昆虫に対して選択的な毒性を示すため、人間には安全とされ、従来の農薬よりも害の少ない農薬として普及してきました(参考サイト)。
ネオニコチノイド系農薬は近年、ハチなどに対する影響が報告されるようになり、欧州連合は2013年に3種類のネオニコチノイド系農薬の暫定使用禁止措置をとりました。今月の英紙ガーディアン記事によれば、欧州連合は、これらの農薬の農地における使用の全面禁止(温室栽培を除く)を提案しています。
記事を読んで、フロンガスによるオゾン層の破壊の問題が頭に浮かびました。
毒性がなく、不燃性で、化学的に安定しているフロンガスは、広範な用途に用いられていました。しかし安定であるがゆえに分解されないまま成層圏に達し、オゾン層を破壊することが明らかになり、国際的に規制されるようになりました。
当初は害が少ないと思われていた物質でも、普及した後に、地球環境の思いもよらないところで悪影響をもたらす場合があります。
人間が作り出した物質が、生態系や地球環境にもたらし得る影響の全容を予測することは容易ではありません。科学的な調査と、継続的なモニタリング、そしてこれに基づく国際的な取り組みが重要なのだと、改めて思いました。
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このneonicotinoid pesticidesの訳出について調べるなかで、pesticideとその訳語の、意味の微妙な違いに目が留まりました。
英英辞典では、pesticideは「pest(有害生物)を駆除する物質」という点が定義の中核になっています1, 2。一方、英和辞典には、農業という目的に焦点をあてた「農薬」という訳語と、駆除対象ごとの訳語が記載されている場合が多いようです。
(例:農薬《殺虫剤・殺菌剤・除草剤・殺鼠剤など》 リーダーズ英和辞典 第3版)
Neonicotinoid pesticidesは主に農業用殺虫剤として用いられるので「ネオニコチノイド系農薬」または「ネオニコチノイド系殺虫剤」という訳が多いのですが、ノミ駆除などの動物医療に用いられるものもあります。そうした文脈では「ネオニコチノイド系の駆除剤」などと訳すとよいかもしれません。
1. https://www.merriam-webster.com/dictionary/pesticide
2. http://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/pesticide