削減貢献―Scope 3 emissions / avoided emissions

2017 / 3 / 9 | 執筆者:Masako Maeda

Source: Corporate Value Chain (Scope 3) Accounting and Reporting Standard

「削減貢献」という日本語から、”avoided emissions”という英語が
ぱっと浮かんだ方は、温室効果ガス(GHG)排出量の算定に関する文書に
日頃から目を通されているのではないでしょうか?

avoided emissionsは、企業のバリューチェーン全体から発生する
GHG排出量の算定基準を定めた「GHGプロトコル」という
世界的なガイドラインで使われている言葉です。

GHGプロトコルでは、バリューチェーンからのGHG排出量を
以下の3つに分類し、それぞれの評価方法を示しています。

スコープ1:自社からの直接排出(自社の工場・オフィス・車両など)
スコープ2:エネルギー起源の間接排出(自社で消費した電力など)
スコープ3:その他の間接排出(自社のバリューチェーンからの排出)

これに加えて、avoided emissionsという考え方を示しています。

スコープ1~3は、「自社のバリューチェーン内での排出削減」を
評価するものです。実際の排出量の経年変化を比較して、
基準年からの削減量を求めます。

一方、avoided emissionsとは、従来の製品やサービスを、
自社が開発した新たな製品やサービスで置き換えた場合に見込まれる
GHG排出量の削減効果を指します。削減貢献量は、代替しなかった場合の
想定排出量(ベースライン)との比較で求められます。

そのため、GHGプロトコルの原文(英語)で使われている
avoided emissionsという表現に、「削減貢献(回避される排出量)」という
日本語があてられているのです。

たとえば、風力タービンの製造企業が、タービンそのものの使用に伴い
発生するGHG排出を低減する技術を開発すれば、それは経年比較が可能な
スコープ3排出量(scope 3 emissions)ということになります。

しかし、それ以上に重要なのが
「化石燃料に代わり風力発電を導入することで得られるGHG削減効果」です。

再生可能エネルギーのように、従来と同様の機能(=電力)を提供しながら、
大幅なGHG排出量の削減が可能な製品やサービス(=風力タービン)は
社会に大きな利益をもたらします。
これを削減貢献量(avoided emissions)として評価するのです。

なかなか難しいですが、このような違いをきちんと理解したうえで、
GHG排出量の削減に向けてさまざまな取り組みを行っている企業の成果を
適切な言葉で伝えられるよう努力を続けたいと思います。

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