サステナビリティ・レポートから学ぶ表現~共に織りなす未来

2017 / 2 / 27 | 執筆者:Yukiko Mizuno


Photo by kibbles_bits

企業が一般に公開するCSR報告書などの文書には、
その会社、業界ならでは、という表現が使われていることがあります。

先日、米国の衣料品大手GAP社の報告書を読む機会がありました。
表紙には、同社の商品である洋服の写真と、
Our Futures Are Woven Togetherというタイトル。
私たちの未来は共にあるのだと伝えるのにweave(糸や織物を織る)という
言葉を使っているのは、衣料品を扱う会社らしい表現です。

私たちそれぞれの未来は、ひとつの布へと織りあげられる。
広い意味でみなが利害関係者(stakeholders)なのだという
強いメッセージのように思います。

報告書を読み進むと、以下のような文章もありました。

Our ethics are ingrained in the culture of Gap Inc. and inform how we run our business each day.

文脈上は integrated や rooted としてもいいところで、ingrained が
使われています。ingrained には、「深く根付いている」という意味のほかに、
「しみ込んだ」、「(糸)が織る前に染めた」という意味もあります。
推測ですが、これもやはり業種を意識して使っているように思います。

ほかにも、自社製品のことを述べるときに、products ではなく
our clothes が多用されているのが印象的でした。
衣料品という一般消費者に身近な商品を扱っている会社ならではの
読者に親近感を与える表現です。

GAP社の報告書は、全体としても親近感を感じさせるものでした。
報告書の文体やトーンは、業界や会社によってさまざまで、
実直さが伝わってくるもの、新分野を切り開く高揚感が表われているものもあります。

読者としては、当然ながら、まず企業の具体的な目標や実績に目が行くものですが、
使われている言葉や文体も意識しながら読むと、その会社の理念や
風土のようなものが伝わってきて、また違った印象を受けるかもしれません。
翻訳者としては、言葉に込められた意思や意図、文体の醸し出す印象なども
生きた言葉で伝えられるよう、力を磨いていきたいと思います。

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