事実と感情を検証する post-truth, fake news

2017 / 1 / 22 | カテゴリー: | 執筆者:二口 芳彗子 Kazuko Futakuchi

post-truth
Photo by Mike Licht

英語版の流行語大賞とも言える英オックスフォード大学出版局が選ぶ
Words of the Year
2016年は、post-truth(ポスト真実)が選ばれました。

私は恥ずかしながら、昨年の11月中旬の発表から遅れること約1ヶ月半後、
「ポスト真実」という日本語を目にして初めて
この言葉が選ばれたことを知り、ある違和感を持ちました。

それは、postwar =「戦後」のように本来は
後に置かれたものの「次の、後の」を表す接頭語「post-」が
「真実」の前に置かれたからです。

オックスフォード大学のリリースにその答えが。
20世紀中ごろからこの接頭語は、
‘belonging to a time in which the specified concept has become unimportant or irrelevant’.
(特定の概念がもはや重要ではない、あるいは的外れになった時代に属すること、仮訳)
というニュアンスをより強く持つようになったとあります。

2016年、Brexit (ブレグジット、英国のEU離脱)や
米国大統領選の文脈での使用頻度が急増、「ポスト真実の政治」のように使われ、
世論の形成に客観的な真実よりも感情や個人の信念の方が大きく影響する
状況を示す形容詞
として選ばれたとあります。

ポスト真実 = 真実はもはや重要ではない。
そんな形容詞で語られる時代に必要なのは
情報を見極める力。

具体的かつ客観的な裏付け情報があるか。
関係者それぞれの立場の見解が書かれているか。
提起された問題に対して適切に回答されているか。

そして今同時に必要なのは、
自分の感情を客観視できるか、かもしれません。
世の中にあふれる fake news(嘘ニュース)の
思惑通りの感情を自分は抱いていないか。

激昂は熟慮を阻み、絶望感は思考停止につながります。

言葉はいつも時代を表す鏡。
事実を様々な側面から検証し、自ら抱いた感情がどこから生まれたか、
ひとりの市民として適切な時間をかけて考えたいと思います。

2017年の11月に、もっと希望にあふれる言葉が選ばれるように。

このエントリーをはてなブックマークに追加