コピー、スローガン、見出しの英語化

企業のレポートやWebサイトの英訳で、
いちばんチャレンジング(そして面白い)のが
キャッチコピーやスローガン、見出しの「英語化」です。

「英訳」ではなく、「英語化」と呼ぶのには理由があります。

原文の情報を余さず正確に伝えることに主眼を置く翻訳とは異なり、
日本語のコピーや見出しを英語にする際は、
いちばん伝えたいことを簡潔かつ魅力的に表現する必要があるからです。

たいていの場合、直訳は失敗します。
日本語を英語にそのまま置き換えると往々にして長くなり、
焦点がぼやけ、伝わりにくくなります。

コピーライティング(以降、「見出し」等の英訳も含め「コピー」とします)
の最大の目的は「言葉の力で人を動かす」こと。
その言葉を見た人が、「先を読みたい」「もっと知りたい」と
思ってくれたら成功です。

日本語コピーの制作では、始めにクライアントとコピーライターが
伝えたいイメージをしっかりと共有します。
しかし、英語版コピーの制作は翻訳の一部として依頼されることが多く、
事前に細かなイメージのすり合わせがなかなかできません。
元の日本語の見出しや本文、図表や背景画像など、
与えられた情報から最大限にイメージをふくらませます。

たとえば、次のような日本語コピーがあるとします。
「多様な人材に活躍と成長の場を提供する」

ここで、伝えたいポイントが「活躍と成長の場を提供」の場合、
英語では「多様な人材」を思い切って省略します。
「多様な人材」を対象とすることは、
前後のセクションや本文から明らかなことが多いからです。
「活躍と成長」を強調するコピーを考えます。

伝えたいポイントが「多様な人材」の場合は、
「活躍と成長」をそのまま英語にするのではなく、
「多様な人材が輝く職場」のように、
より簡潔で主旨が際立つコピーを考えます。

また、本題が日本語コピーの外にあると感じられる場合、
あるいは本文に印象的/象徴的な事実が書かれており、
そちらを前面に出すことで読者の関心を引ける、
テーマが簡潔明瞭に伝わる、と考えられる場合は、
日本語コピーから離れて自由な発想で、
本文から受け取ったメッセージを英語のコピーに置き換えます。
その際、日本語コピーに即した英語もあわせて提案し、
ご検討いただけるようにします。

最初の2つのケースでは、本文の表現を活かしたり、
ひとひねりしたりすることで、良いコピーができるかもしれません。
しかし、3つ目のケースでは、日本語のコピーを
白紙の状態から生み出すのと似た思考が要求されます。

お客さまに喜んでいただけるご提案をひとつでも多く、
シンプルで力強く、魅力に満ちたコピーを
と日々、試行錯誤を重ねています。

Photo by Ana Rodríguez Carrington

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