Translators in Sustainability 伝わるコミュニケーションへの道
英語版レポート制作:文字溢れを防ぐ!<その2>
前回は、「固有名詞の短縮」をご提案しました。
しかし、和文の情報を余さず拾う逐語訳をしていては限界があります。
そこで、次のご提案です。
●繰り返しを避ける
ある物事の重要性を強調するために、同様の記述が
レポート全体を通して繰り返されることはよくあります。
翻訳では、原文に「足さない、引かない」が基本とされますが、
レイアウトの制約を受ける場合、情報の整理が必要になることもあります。
また、前後の流れを考慮し、重複する情報をそぎ落とすことで、
より読みやすい英文になるというメリットもあります。
例えば、「製品のライフサイクル全体での環境負荷低減」について
述べられたセクションで、この文言が繰り返し登場する場合、
2回目以降は簡潔に表現します。
reducing environmental impacts across the entire product life cycle
reducing impacts throughout the life cycle
reducing impacts
このように、表現の繰り返しや文脈から自明の事実については、
割愛や簡潔な言い換えを検討します。
●始めから和文と同じ長さの英文を作る
「固有名詞の短縮」や「必要に応じた情報整理」を行ったうえで、
「和文と同じ長さの英文」をはじめから意識して作ります。
段落ごとに和文と英文の長さを確認し、可能な限り同じ分量に収めます。
文字溢れの恐れがある場合は文単位で
「すべての情報を含むパターン」と「簡潔なパターン」の両方を示し、
原文に含まれる「割愛/簡略化が可能な情報」を探ります。
次の例で、カッコで括った部分の情報は同じページの別の箇所に説明があるため、
「簡潔なパターン」を採用して和文の長さに近づけます。
原文:
(国内外でXXを展開する)国内XX事業と海外XX事業、および(その他のブランドを展開する)グローバルブランド事業があります。
すべての情報を含むパターン:
Its business comprises three major segments: XX Japan and XX International, (which manage the XX brand worldwide,) and Global Brands, (a collection of other brands).
簡潔なパターン:
Its business comprises three major segments: XX Japan, XX International, and Global Brands.
原文の長さを常に意識し、その真意を確実にとらえ、
「本当に必要な情報」だけを簡潔に表現する。
簡単ではありませんが、心がければ英文の引き締めは可能です。
要点をおさえた文章をすっきりとレイアウトに収め、
読者の興味を離さないレポートをぜひ完成させましょう!
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