Translators in Sustainability 伝わるコミュニケーションへの道
生物文化多様性 = biocultural diversity(その3)里山里海
生物多様性と文化の多様性を保全するための3つ目のキーワードは里山里海です。
手付かずの自然だけが豊かな自然ではなく、農林水産業など
人間活動の影響を受けて形成・維持されている二次的自然環境、
つまり里山や里海も、生物多様性の保全に重要な役割を果たします。
よく知られている具体例としては、適正な間伐を行う森林管理ですが、
地球規模生物多様性概況第4版(GBO4)の92ページでは、
家族経営の小規模農場で、伝統的な作物品種が作られ、
作物の遺伝的多様性が保全されていると報告されています。
フィレンツェ大学教授の講演では、
里山の概念に通ずるフィレンツェの土地利用状況の説明がありました。
居住区域・畑・森林という土地利用がモザイク状に入り組んでいて、
樹齢100年を超える大木が人々が暮らす場所のすぐ側にあったり、
日差しのよく当たる山の斜面を利用してオリーブ畑が広がっていました。
氏の講演の中でよく使われた言葉が、landscape=景観です。
景観とは、自然と人間界のこととが入りまじっている現実のさま。
(広辞苑第六版より引用)
里山と言う日本独自の概念をアピールしたいと希望されるクライアントも多く、
弊社では、satoyama あるいは satoyama landscape とし、
例えば、里山の保全に有効な農業を
自然と共生する農業= agriculture in harmony with nature
と説明し、この概念の理解を促すように仕上げます。
3回にわたり、生物と文化の多様性のキーワードとして、
言語と民族、伝統工芸、里山里海をご紹介してきました。
どれも「ひと」がどのような自然環境の在り方を目指し
どのように自然と関わっていくのか、
その方向性を切り取って見せてくれています。
世界農業遺産(GIAHS)に認定された石川県の能登の里山里海、
日本ジオパークである白山手取川流域、ユネスコ・クラフト創造都市の金沢が、
それぞれの知恵と強みを生かし、この地域全体の活性化と生物文化多様性の保全につながることを期待しています。
Photo by PYONKO OMEYAMA
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