Translators in Sustainability
Weather Derivative = 天候デリバティブ
「天候デリバティブ(weather derivative)」という言葉をご存知でしょうか?
天候デリバティブは、その名称から想像されるとおり金融派生商品の一種です。
気温や降水量、降雪量などの天候に関する指標が
契約で定めた条件を上回る(または下回る)と補償金が支払われる仕組みで、
天候インデックス保険(weather index insurance)とも呼ばれます。
1990年代後半に米国で開発され、日本でも現在、数社が取り扱っています。
最初は「天候」と「デリバティブ」が結びつきませんでしたが、
気候変動による影響を「リスク」ではなく「機会」ととらえて
開発された保険と知って興味を持ちました。
日本では、冷夏のビール売上に対するリスクヘッジといったように
企業向けの契約が主流のようですが、
収益が天候に大きく左右される農家の不安を解消する
優れた仕組みだと思いました。
天候デリバティブ(インデックス保険)は、
昨年発表されたIPCC第5次評価報告書 第2作業部会報告書でも、
「well suited to the agricultural sector in developing countries
(リスクファイナンスの手法として)途上国の農業部門に適している」
と評価されています。
その一方で、アフリカを例として以下のような課題があると述べ、
途上国における普及の難しさを伝えています。
・Low prevalence of insurance
保険が普及していない
・Limited ability to afford insurance premiums
(特に貧困層で)保険料の支払能力がない
・Limited availability of accurate weather data
正確な気象データが不足している
・Difficulties in establishing which weather conditions cause losses
損失を招く気象条件の設定が難しい
先日、『気候変動リスクとどう向き合うか』という書籍で、
損保ジャパン日本興亜がタイの稲作農家向けに開発した
天候インデックス保険について知りました。
アフリカと同様、タイの農村部でも保険そのものの普及が遅れています。
しかし、この商品を理解してもらうために同社が開いた説明会では、
現地の農家から
「こうした商品があるならぜひ利用したい」
とポジティブな反応が返ってきたといいます。
気候変動が不可避となりつつある中、変化に「適応(adaptation)」し、
変化の中で食糧生産を支えるひとつの仕組みとして、
天候デリバティブが今後ますます広がっていくことを期待しています。
Photo by Sarah Tzinieris