Translators in Sustainability 伝わるコミュニケーションへの道
「一律」は「一枚の毛布(blanket)」
先月、気候変動リスクに関する書籍の英訳をチェックしていたときのこと。
「一律のトップダウン型の対策だけでは対応が困難」という文章で、「一律の」にどんな英語をあてようかと立ち止まりました。続く文章の「状況に応じた」と対比する形容詞を入れたいところです。和英辞書で「一律の」を引くといくつか例文が出てきます。その中にblanketという言葉を見つけました。海外のメディアにもあたったところ、“blanket approach”や“blanket policy”といった形でよく使われているようです。
そこで、“a blanket top-down approach”でどうかとネイティブの翻訳者さんに提案したところ、「いいね!自分で考えたの?笑」とコメントが返ってきました。こんな風にぴたっとはまる言葉が見つかって翻訳者さんにも同感してもらえたときは、とても嬉しいものです。
先日、『CSR―企業と社会を考える』(谷本寛治・著、NTT出版)という本を読んでいたときのこと。最終章にこんな文章がありました。
「CSRの特性からして社会とのかかわりを“一枚の毛布で包んでしまう”ようなアプローチは適切ではない」
イギリスの貿易産業省CSR担当者の発言を訳されたものです。“blanket approach”!とっさにこの言葉が頭に浮かびました。「いろいろな物をひとまとめにバサッと毛布で包んでしまうような大雑把なやり方」といったところでしょうか。日本語で「一律の対応」というと「大雑把」な感じがするのと似ています。
ある英英辞書でblanket(adj.)を、“effective or applicable in all instances”と定義していました。気候変動にしてもCSRにしても、通常求められるのは個々の状況に即した“tailored approach”で、「あらゆるケースに有効な/適用できる」万能薬のようなアプローチというものは存在しません。
「一律の対応では限界がある」、こんな表現に出会ったら…
「毛布(blanket)」を思い出してみてください!
Photo by Will Keightley