Translators in Sustainability 伝わるコミュニケーションへの道
この翻訳に、どう「取り組む」か?
Photo by Trees For The Future
英訳をするときに、頭を悩ます言葉の数々。専門用語にも苦労しますが、日常的に使っている言葉も難物です。例えば、企業のCSR報告書などで目にする「~の取り組み」という表現。一見、平易なのですが、文脈に即した自然な英語にするには少し工夫が必要です。
「取り組み」、「取り組む」の意味は、辞書では以下のように説明されています。
取り組み(取組)
-「とりくむこと。相手となること。物事にあたること。」(広辞苑)
取り組む
– 「真剣に事をする」(広辞苑)
– 「問題や懸案を解決・処理するために熱心にとりかかる」(明鏡国語辞典)
「物事」や「問題、懸案」がどんなものか、それに対してどんなことをするのかによって、幅広い意味を表せる言葉なのだな…そんなことを思いながら資料を読んでいくと、こんな表現が目に留まります。
Biodiversity initiatives
Tree planting activities
Improving production efficiency
対象はそれぞれ異なりますが、どれも「物事」や「問題、懸案」に対して、「真剣に何かをしていること」、つまり「取り組み」を表していると思いませんか?
「目標の達成や問題解決に向けた取り組み」、「新しい取り組み」、というニュアンスを出したい場合には initiative(s) がしっくりきます。大きな「取り組み」の中の、何か具体的な活動を表すときには、activities を使うことができます。企業全体の「環境問題への取り組み」の下での「植林の取り組み」といった場合です。「取り組み」に直接対応する言葉を用いずに動名詞で表現できる場合もあります。上の Improving~ というのはその一例です。
こういう場合は必ずこう訳す、という規則があるわけではありませんが、こうした「訳語の選択肢」をたくさん持っていると、文脈によって工夫ができるようになります。最終目標は、読者に、原文の意図するところを自然な表現で伝えること。そう心がけて、日々翻訳に「取り組んで」います。
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