Translators in Sustainability 伝わるコミュニケーションへの道
energy poverty=「エネルギー貧困」
2014 / 10 / 23 | カテゴリー: 【環境】翻訳者が考える環境課題 | 執筆者:二口 芳彗子 Kazuko Futakuchi
Photo by Rajeev
リサーチ中に、”energy poverty”と言う言葉に行き当たりました。直訳・定訳は「エネルギー貧困」なのですが、どういう状態を指すのか、その定義を調べました。
国際エネルギー機関(IEA)によれば、a lack of access to modern energy services、つまり近代的なエネルギー・サービスへのアクセスの欠如を指します。各家庭が電気やクリーンな調理設備(屋内で空気を汚さない燃料やコンロ)が手に入らない状態です。
類似する言葉に、”fuel poverty”=「燃料貧困」があります。こちらは、英国政府が低所得と家計への高負担に関する用語として使用し、「平均中流家庭よりも多くの燃料費を必要とし、実際にそれだけの燃料費を使うと、貧困ラインを下回る」場合に、燃料貧困の状態にあると定義し、大きな3つの要素として、住居のエネルギー効率、エネルギーコスト、家庭の収入をあげています。
両方とも、あえて”poverty”を用いている背景は? 現代社会では、安価で健康に害のないエネルギーが手に入るかどうかが、貧困問題と密接に関係があることを感じさせます。
エネルギー貧困は、主に途上国でエネルギーへのアクセスがないことが主要な問題と考えられ、一方、燃料貧困は、英国や欧州など先進国で、エネルギーへのアクセスがあっても、高価だったり収入レベルが低いため、経済的にそれができない家庭がある、あるいは多くなることが主要な問題と考えられています。
国際問題としての日本での議論は多く見受けられ、日本でのエネルギー貧困に関する2013年度の論文もありましたが数が少なく、わが国の問題としての議論は、まだ始まったばかりのようです。