decent work=「ディーセント・ワーク」

2013 / 7 / 9 | カテゴリー: | 執筆者:二口 芳彗子 Kazuko Futakuchi

tuc stand-up for decent work 34
Photo by Philosophy Football

前回のブログでご紹介したGRIガイドライン第4版(G4)のなかで、気になる言葉にdecent workがあります。1999年より国際労働機関(ILO)が、このコンセプトの普及を活動の中心に置いています。

decentという形容詞は、辞書でひくと「(社会的規準に照らして)見苦しくない、ちゃんとした、きちんとした、礼儀正しい、まともな、まっとうな」といった訳があります。飛び抜けて良いわけではないけれども悪くもないというニュアンスがあり、実務翻訳では訳しにくい言葉のひとつです。provide decent home というフレーズを訳すのに困って、悩んだ結果「平均的な住居を提供する」としたことがあります。

ILOの資料では日本語に訳さず、カタカナでそのまま「ディーセント・ワーク」と表記され、その他の場合でも

decent income=ディーセントな収入
decent and productive work=ディーセントで生産的な仕事

というふうにすべて「ディーセント」と訳されています。また、最近では多くの場合ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)と説明が添えられています。

仕事は本来、自立するため、家族を支えるための糧を得る活動であり、世の中の誰かの役に立っているという充実感と喜びの源。しかし、現実は必ずしもそうではありません。失業(unemployment, jobless)、非正規雇用(irregular employment, temporary work)、不当な賃金(indecent wages)、危険な労働環境(unsafe work environment)、ブラック企業(black company)、サービス残業(unpaid work)。

行き過ぎたグローバル化や市場経済によって労働が単に金銭を稼ぐためだけの手段や搾取の対象となっていることに対して、あまりポジティブでもなく、強いメッセージ性もなかったdecentという言葉をあえて使うことで、仕事や働くことが本来あるべき姿を取り戻そうとしているように思えます。

ディーセント・ワークと聞くと、私の心に浮かぶのは「足るを知る」です。すべての人がこの精神で仕事と報酬を分けあったとき、ディーセント・ワークが実現するように思います。

ブログSustainability Frontlineでは、日本企業はこの問題にどう取り組むべきか、を取り上げています。日本でも「ディーセント・ワーク」が、ビジネスの現場で人々の口にのぼる場面が増えそうです。

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