Translators in Sustainability 伝わるコミュニケーションへの道
ally=「アライ」
翻訳を仕事としていると、初めて耳にする言葉や
最近広まっている言葉に関心が行きます。
先日の朝日新聞の「記者有論」で
「アライ」と言う言葉について触れていました。英語ではally。
LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル=両性愛者、
トランスジェンダー=性同一性障害者など)を支援するLGBT以外の人を指します。
「同盟者」を意味する英語が語源で、翻訳されず
「アライ」と言う英語の発音のまま、使われています。
電通総研の2012年の調査では、成人男性約7万人中LGBTは5.2%で、
セクシャルマイノリティと言われるように、社会では少数派となります。
これまではその少数派とそれ以外の人々だったわけですが、
「それ以外の人々」の中でアライとアライでない人々が生まれています。
多様な性を理解しようとする動きが生まれているのです。
法律や税金制度などが、異性同士の結婚を前提に規定されていますが、
最近では同性婚を合法とする国や州が欧米に増えつつあり、
理解しようとする思いが、形になりつつあるのを実感しています。
フランスで同性婚合法化法が成立、世界で14か国目 (AFPBB Newsより)
言葉は何かを区別するために生まれてきているのではないかと、時々思います。
社会の中で新しい動きが生まれ、それを伝えよう、それについて議論しようとする時、
何らかの名前を与える必要が出てくるからです。
新しい動きも、それに続く次の新しい動きが生まれたら、
当初の言葉は風化し、やがて消えてゆくでしょう。
また、ジェンダー・アイデンティティーのように
その言葉を使うことで立場が明確になり、
人が生きていきやすいのであれば、言葉は確立し、定着するでしょう。
翻訳やメディアの世界では、アライはアライのまま、使われていきそうです。
カタカナを使い過ぎたとしてNHKが訴えられましたが、
その言葉に独自性がある場合はそれを使うしかなく、
説明を添えて理解が広まるようにしていきたいと思います。