Translators in Sustainability 伝わるコミュニケーションへの道
翻訳プチトレーニング otherwiseとbeforeの訳出がカギ
先日、国連環境計画(UNEP)が発表した持続可能な都市化に関する報告書“City-Level Decoupling: Urban Resource Flows and the Governance of Infrastructure Transitions”のプレスリリースを読んでいて、和訳にひと工夫いるなあ、と感じた一文があります。
The Mariannhill landfill site near Durban, South Africa, collects and treats otherwise toxic liquid waste from the site before re-using it for irrigation.
(プレスリリースの全文はこちら)
otherwiseとbeforeを、あなたならどう訳しますか?
まず、otherwiseですが、「前記以外の場合」という役割をすることばです。「さもなくば」と覚えている方も多いですよね。
例文1:Go at once, otherwise you will be late.
すぐ行きなさい、そうでないと遅れますよ。
(すぐ行かない場合は、という意味を成す。)
例文2:Knitting helped me pass away my otherwise tedious hours.
編み物のおかげで手持ちぶさたにならずにすみました。 (研究社 新和英中辞典より)
(編み物がなかったら、編み物をしなかった場合は退屈な時間になってしまうところでした、という意味を成す。)
次にbeforeについて、考えてみましょう。
例文3: I ate nothing before going to school.
学校では「・・・ before ~」で、「~の前に・・・」とbefore~の部分から訳すように習いませんでしたか? そのように訳すと「学校へ行く前に、私は何も食べなかった。」となりますね。
間違いではないのですが、翻訳の場合「・・・の後に~」と訳すことがあります。つまり「私は何も食べずに学校へ行った。」という具合です。前から訳して(理解して)いける、思考が英文と同じように働くのでよく使います。実際、より自然な訳になることが多いのです。
さて、冒頭のUNEPリリースの一文を訳してみましょう。
The Mariannhill landfill site near Durban, South Africa, collects and treats otherwise toxic liquid waste from the site before re-using it for irrigation.
otherwiseは「treats」を受けてtoxicにつながり、「処理をしない場合は有毒となってしまう廃液を」となりますね。beforeは例文3の後述のように、前から訳さないと不自然な日本語になります。そう考えた結果、以下の訳に落ち着きました。
(訳例) 南アフリカ共和国ダーバンの近くにあるマリアンヒル埋立処理場では、処理場で発生する廃液を回収・除毒処理をし、灌漑用水として再利用している。
情報収集として英文を読むのですが、ついつい「日本語にしたらどうなる?」と考えてしまいます。そんな時はプチ・トレーニング。さっと訳してみる。これが現場でもいきるんですよ。みなさんも試してみてくださいね。