/ アナリスト・リサーチャー

船原 志保さん Shiho Funahara 

多彩なキャリアを糧に、企業のサステナビリティ施策を後押し

外資系アパレル企業のCSR部に勤めていた時に抱いた問題意識をきっかけに英国の大学院でサステナビリティ学を学び、修士号を取得した船原さん。これまでの多彩なキャリアと今の仕事のやりがいをお聞きしました。

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船原さんプロフィール写真
-これまでどのようなお仕事をされてきましたか?

大学でフランス語を専攻し、それを生かしたいという思いがあったので、大学卒業後は外資系アパレル企業に就職し、そこで5年間働きました。最初はお客様対応の業務をしていたのですが、途中からCSRの業務に関わるようになり、企業のサステナビリティへの関心が強くなりました。そんな時にラナプラザの悲劇*が起こり、アパレル業界の一員としての問題意識がそれまで以上に高まり「企業全般のサステナビリティの実態を知りたい」と思うようになったんです。

それで、英国の大学院でサステナビリティについて学ぶことを決意しました。先進国と途上国両面からサステナビリティを学ぶことができ、数カ月の滞在経験もあるコンゴ民主共和国のサステナビリティを研究テーマにしている教授がいたこと、1年で修士号を取得できることが決め手でした。

*ラナプラザの悲劇
2013年にバングラデシュの商業施設「ラナプラザ」が崩落し、4000人以上の死傷者が出た事故。この施設にはアパレルブランドの縫製工場が入っており、犠牲者の多くはそこで働く人びとだった。この事故により現地の劣悪な労働環境が明るみになった。

-なるほど。修士論文の研究テーマについても、詳しく教えてください。

修士論文は大学院の授業でさらに深く学んでいく中で、興味が高まった「コンゴ民主共和国における紛争鉱物をめぐる情報開示規制の有効性」をテーマにしました。コンゴ民主共和国の紛争鉱物問題はサステナビリティ、政治、地域社会の問題などさまざまな要素が複雑に絡み合っており、サステナビリティをめぐる課題のあらゆる要素が詰まっています。1カ月ほど現地調査をした後、論文を書きました。

現地の小学校にて授業の見学・交流

現地の小学校にて授業の見学・交流

調査を進める中で実感したのは、問題解決の進め方の難しさです。先進国側からの規制が厳しくなったことで、コンゴ民主共和国の企業が情報開示をするようになったのですが、それが逆に現地の状況を悪化させている側面もありました。政治汚職や環境問題、地域社会の問題を置き去りにして開示ばかりを進めても、本当の意味で前進できないというのが私の結論です。情報開示への投資だけでなく現地のコミュニティ支援や、政治汚職問題の解決につながる支援をするべきではないか、と考えています。

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-修士号の取得後は、どんなキャリアを選んだのですか?

大学院で学んでいく中で実感したのは、自分はまだまだ日本企業のサステナビリティへの取り組みの実態を知らないという事実です。授業中に教授が「日本企業はよく話を聞くと素晴らしい取り組みをしているが、それがうまく伝わらない」と話しているのを聞き、日本企業の情報開示のサポートをしたいという思いも芽生えました。それで、修士号の取得後は、日本に戻りサステナビリティ関連のコンサルティングを行っている会社で働くことにしました。

その会社には2年ほど勤務し、統合報告書やサステナビリティレポート制作、外部評価の向上支援などをしました。興味がある分野の仕事だったので、やりがいがあり楽しかったです。ただ、レポート制作をメインにやっていたこともありタイムマネジメントが難しく、体調を崩すことが増えてしまって……。「この環境で働き続けるのは、私には難しいかもしれない」と感じ始めました。それで、もう少しワークライフバランスを整えて働けないだろうかと思い、転職することを考えはじめました。

-そんな時、エコネットワークス(ENW)と出会ったのですね。出会いのきっかけは? ENWではどんな業務を担当しているのですか?

ENWはウェブ検索で見つけ、特に「関心をお持ちの方へ」のページを見て「ほぼ100%リモートワークのここならワークライフバランスを意識しながら、自分の専門性を生かして働けそうだ」と思いました。現在はフルタイムの社員として働いており、1年が経ったところです。今は主に調査分析を担当しており、企業のサステナビリティレポート・統合報告書のレビューや対照表の作成、国際基準に沿った情報開示に関する支援をやっています。加えて、ENWの実績ページの取材、執筆も担当しています。

最近嬉しかったのは、ENWのウェブサイトにある私が書いたサステナビリティ・フロントラインの記事を読んだ新聞社系のウェブメディアから連絡を受けたことです。それをきっかけにインタビューを受け、記事にコメントを載せていただきました。記事に込めた私の思いや考えを、さらに多くの方に届けることができたことに感動しました。

-プロジェクトマネジメントやリサーチ、ライティングをするうえで、どんなことを心がけていますか? 大切にしているポイントは?

一緒にプロジェクトをしてくださる方が気持ちよく仕事ができるように、スケジュール調整や進行方法に気を配っています。リサーチに関しては、企業の情報開示の分野は業界の動向が早く、めまぐるしく状況が変わっていくので、ニュースや本、オンラインセミナーへの参加を通じて自分の知識を常にアップデートしています。いざというときに情報提供できるような引き出しをたくさん作っておきたいです。

-今はどちらにお住まいですか? オフの過ごし方は?

1年ほど前から神奈川県内に住んでいるのですが、家の裏が小さな山で自然が豊かな一方で都心へのアクセスが良く、気に入っています。オフの日は散歩して、近場の洋食屋さんや定食屋さんなどに行っています。パートナーが甘いものが好きなので和菓子、洋菓子もよく買いに行きます。

近所の洋食屋さんにて。お気に入りのオムライス

近所の洋食屋さんにて。お気に入りのオムライス

旅することも好きで、社会人になって以来、まとまった休みのたびに一人でゆっくりできる場所を求めてチリ、フィンランド、タイ、アフリカ各国などいろいろな場所を旅していました。

ものづくりも好きで、コンゴ民主共和国にいる友人とともに、アフリカンテキスタイルを使ったアクセサリーを作っています。できたものは友人や知人にプレゼントしたり、自分でつけたりしています。

最近作ったアクセサリーの数々

最近作ったアクセサリーの数々

-サステナブルな働き方・暮らし方のために大切にしていることは?

1週間分のTO-DOを週はじめに必ず確認して、提出物や自分の予定を踏まえてスケジュールを立てるようにしています。また、メリハリを大切にしたいので終了時間を決めたうえで、時間内に進めるようにしています。ENWで働くようになってから、毎日落ちついて仕事に取り組めていると思います。

-これからチャレンジしたいことや、今後の夢を教えてください。

大学時代にコンゴでボランティアをしたこと。その後アパレル業界で働いて企業の抱える課題を感じたこと。大学院でサステナビリティ学を学んだこと。コンサルティング企業で現場の支援をしてきたこと。私の経歴は文字だけでみるとバラバラに見えます。でも、振り返ってみると全て意味があると感じています。サステナビリティは扱う分野が幅広く、いろいろな要素があり、これまでの多様な経験がヒントとなることが多いからです。

さまざまな経験を経てたどりついた今の仕事では、これまで点と点だった経験が線としてつながり生かされていると、日々感じています。これからも、目の前の仕事に一生懸命取り組んでいきたいです。そして、人々がもっと暮らしやすく幸せだと思えるような社会を作っていけるといいな、と思います。(取材日23/10/12)

調査をしていた当時(2019年)の写真

調査をしていた当時(2019年)の写真。地域のフェスティバルに参加

 

船原 志保

岐阜県出身。大学時代にフランス語を専攻し、卒業後は外資系アパレル企業に5年間勤務。CSRに関する業務を担当する中で、サステナビリティに関する関心が強くなり英国の大学院に留学し、サステナビリティ学の修士号を取得。帰国後は、サステナビリティ関連のコンサルティング会社で統合報告書やサステナビリティレポート制作、外部評価向上支援などの仕事に携わる。2022年よりエコネットワークスでアナリスト・リサーチャーとして働いている。

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