/ ライター・編集者

小島 和子さん Kazuko Kojima

学び合いや対話から生まれる変化を信じて

ライター・編集者として、企業の環境や人材の領域に関する情報発信を支援している小島和子さん。エコネットワークス(ENW)では、パーパスをはじめ、組織文化を言語化する役割なども担ってきました。そんな小島さんに、現在の仕事内容や、最近自身の中で起きているという「変化」についてお聞きしました。


小島 和子

フリーランスのライター&編集者。最初に勤めた出版社で約10年間、語学書や旅行記など異文化にまつわる書籍の編集を手がける。環境をテーマにした本づくりをきっかけにキャリアチェンジ。環境省の外郭団体を経て、持続可能な社会を目指すNGO「Japan for Sustainability」で情報発信業務などに従事。NGOのパートナー組織として、初期(2008年頃)のENWに出会い、ステークホルダーダイアログ運営などに携わる。その後いったん出版業界にも軸足を戻し、2013年から出版プロデュースを手がけるように。2020年頃から再び縁あってエコネットワークスにも参画。


一冊の本が転機に「サステナビリティ」との出会い

―はじめに、サステナビリティの分野に関心を抱くようになったきっかけやENWとの出会いについて教えてください。

「サステナビリティ」という言葉に初めて出会ったのは、最初に勤めた出版社で環境をテーマにした教材を制作していたときでした。当時はまだこの言葉が今ほど社会に浸透していなかったため、辞書を引いたり、著者に聞いたりしてみたものの、本質をつかみきれない概念だと思ったのを覚えています。この書籍の編集を担当したことをきっかけに、仕事として環境問題に取り組んでみたいと思うようになり、環境省の外郭団体に転職しました。もともと、アウトドアレジャーが好きで、休みの日はよく海や山などに出かけていたため、「この美しい自然が壊れていくのはおかしい」と単純に思っていたことも背景にありました。

環境省の外郭団体では、主に機関誌での発信を担当し、編集者としてのスキルに加えて、取材・執筆のノウハウが身に付きました。その後、持続可能な社会を目指すNGO「Japan for Sustainability(JFS)」に籍を移し、若い世代向けの啓発プログラムや情報発信業務などを担当。この団体のパートナー組織として設立されたのがENWでした。JFSの仕事の傍ら、ENWの情報発信やステークホルダーダイアログの運営などにも携わるようになりました。

―ENWが設立された当初から携わっているメンバーの一人なのですね。

初期の頃はご一緒していましたが、いったん離れていた時期もありました。ところが、2020年頃に某所でばったりENW代表の野澤健さんと再会したのです。ご縁を感じ、そこからENWのプロジェクトに再び参加するようになりました。

クライアント案件では、企業のサステナビリティレポートや経営トップによる鼎談記事、取り組み紹介の記事など、投資家から消費者まで幅広い読者を対象とした発信業務に従事しています。国内外の政策や規制などの変化が速いこの領域で専門性を磨き、より高品質なアウトプットにつなげていくため、現在「サステナビリティ・オフィサー」の資格取得に励んでいます。ENWには、パートナー*の能力開発を支援する制度があるため、それを利用してスキルアップを図っています。

また、機会があればリサーチ業務にも携わってみたいと考えています。例えば、私が専門性を高めたい領域で知見のあるリサーチャーと組ませてもらい、調査案件に挑戦するなど、様々なやり方を試せるのではないかと考えています。

ENWはパートナーや組織の成長機会を常に模索している組織ですね。私自身も新しいことを学ぶのが好きで、学び合える組織づくりにも強い関心があるため、今後も何らかの形でENWの基盤強化にも携わっていけたらと考えています。

* ENWの業務で関わりのある方。雇用契約者、業務委託契約者の両方を含む

ENWの存在意義を言語化、その言葉が自身を動かす原動力に

―小島さんは、これまでもENWの組織文化を言語化する役割を担ってきたように思います。

私がENWに再び関わり始めたのが、ちょうど組織の中長期的な方向性を考える議論が始まった時期でした。そのプロセスの一つとして、ENWのコミュニティ事業であるTSA(Team Sustainability in Action)のあり方や活動を紹介する記事を執筆したり、ENWの組織文化を考えるオンラインセッションの運営を担当し、対話を通して見えてきた気づきをまとめたりしました。

一つの組織に長く関わり続けると、かえって見えづらくなることもあると思います。ブランクを経て再びENWと出会い直したからこそ、また別の組織で人材関連の記事執筆に携わっているからこそENWやTSAの立ち位置を客観的に見られた部分もあったかもしれません。私は元来、対象に「寄る」のではなく、すごく「引いて」俯瞰的に物事を見るタイプなので、そうした特性を活かせる機会だったともいえそうです。

昨年は、パーパス策定のプロセスに参加し、多くのパートナーの思いを汲み取りながらENWの存在意義や、その実現に向けた姿勢を言葉にする役割を担いました。

パーパスの冊子

パーパスの一文に込めた思いや、その実現に向けた姿勢や考え方を伝える冊子(Photo by Miho Soga / Illustration by Akiko Totsuka)

パーパス策定のプロセスに関われたのは、とても良い機会でした。この冊子の最後は「今、動き出す。『私』から始まる、チーム・サステナビリティ」という言葉で終わるのですが、つくったからには動かないと!と自分自身を鼓舞するものになっています。「私」から始まるって、ついサボりがちなところですが、まずは小さくても動き始めてみようと自分に言い聞かせています。

多様なコミュニティと対話を重ねながら、学びと実践を繰り返す

―以前、パートナーのMyパーパスとENWの存在意義が重なり合う部分についてディスカッションを実施したときに、小島さんがご自身の軸として大切にしたいのは「土との対話」だと話していたのが印象的でした。

目に見える地表だけでなく、土の中から環境を整えるという発想が大切だと思っていて、一般社団コモンフォレストジャパンが主催する森を育むプロジェクトにも参加しています。「自分らしくありたい」とか、「自己実現」について考えたとき、私は「大地とつながっていたい」という思いが強くあります。また、頭でっかちになるのではなく、身体を動かす作業が好きなので、数年前からこうした活動に参加するようになりました。

さまざまな草木の実生

森を育むプロジェクトに参加しているときに撮影した一枚

かたや、ライター・編集者としてのこれまでの経験や知識を活かすという面では、自分自身が価値を見出せるものについて発信していきたいと思っています。言葉には不思議な力があり、うまく伝われば、受け取った人のアクションにつながることもあります。実際、「パーパスの言葉に後押しされた!」というパートナーがおり、その話を聞いたときは、自分の紡いだ言葉が誰かの新たな行動を生むのはすごいことだと改めて実感しました。

―関心のある領域での学びや対話と発信を連動させて、周囲に働きかけていくことが、小島さんのMyパーパス(存在意義)だといえそうですね。

学びや対話といった観点では、最近、地域の方々とも積極的に関わっています。私の暮らす地域では今、「対話」を大切にしたまちづくりを目指しており、行政が住民の声を聴くイベントなどを開催しています。そうした機会をとらえ、自治を高めるとはどういうことかを考えたりしています。他には、気候変動対策に取り組む世界的なイニシアティブ、クライメート・リアリティ・プロジェクト(CRP)のリーダーにもなり、気候変動対策に向けて、これまでより一歩踏み込んで、積極的なアクションを起こしたいと思っているところです。「静観して、仕方がないと諦めない」「人任せにしない」「対話を諦めない」という気持ちで、自分から地域社会との「関わり代(かかわりしろ)」を取りにいかなければ、と思っています。地域に目を向けるようになるなんて自分でも少し意外でした。結果として、それが「社会に働きかける」ことになればいいなと思います。

―ENWのパーパス「Foster Team Sustainability together, everywhere.」の実現に向けて、組織づくりに携わる一方で、その他のコミュニティにも積極的に参加している小島さんだからこそできることがありそうですね。

 

purpose

ENWのパーパス

ENWは今、パーパスの実現に向けて、これまで以上に強くしなやかな組織になるために、体制を整えたり、事業のあり方を再構築しようとしたりしていますね。パートナー一人ひとりが知見や経験を深めていく必要があると感じています。私自身、他の組織やコミュニティで得たインプットを活かしながら、学びの仕組みをはじめとするENWの組織づくりに今後も携わり続けていきたいと考えています。こうしたプロセスを経て、パートナーが互いに専門性を高め合うことで、ENWの業務以外にも各自が参加する組織やコミュニティで力を発揮できるかもしれません。ENWパートナーが行く先々で「チーム・サステナビリティ」の輪が広がる。そんな姿を想像しながら、私自身も学びと実践を繰り返していきたいと思います。

(取材日:2025年5月19日)

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