パートナーの負担軽減を第一に ENWのインボイス&インフレ対応方針

2023 / 6 / 15 | カテゴリー: | 執筆者:EcoNetworks
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(Photo by Markus Winkler via Unsplash)

2023年3月31日に、ENWパートナーに向けて「インボイスとインフレに伴う影響に対するENWとしての対応方針」が発表されました。背景、具体的な内容、ENWパートナーの反応をインタビュー形式でお伝えします。


インタビュイー:野澤 健さん (ENW代表)、二口 芳彗子さん(ENW取締役)


聞き手:曽我美穂
富山県在住のエコライター、エディター。ENWではプロジェクトマネージャーや、コミュニティ事業「TSA」のお世話役を務める。


社会情勢を考え、できることを検討

-まず、なぜインボイスとインフレへの対応を行うことにしたのかを教えてください。

(野澤)ENWパートナーのお力添えによって、ここ10年間でENWの売上は上昇を続けてきました。一方で、社会一般の状況としては、新型コロナウイルスやエネルギー価格の上昇、急激な為替変動がもたらす影響により、個人の負担が大きくなっています。こうしたギャップを埋めるために組織としてできることを実施したいと考え、これまでもENWではコロナ対策ファンド(ENWパートナー全員が対象)や為替変動対応ファンド(海外在住者が対象)を実施してきました。そして今回、急激な物価高や、日本で今秋から開始されるインボイス制度を受けて新たな対応方針を策定しました。

インボイス制度について一緒に学び、施策を決定

-インボイス制度への対応方針を決めるまでの経緯は?

(野澤)ENWパートナーの多くが、フリーランスとして働いています。そこで、まずインボイス制度の理解をみんなで深めるために、日ごろからお世話になっている税理士の戸村 涼子さんに講師をお願いし、オンラインのインボイス制度勉強会を実施しました。勉強会では制度の概要と、個人と組織に及ぼすインパクトを学びました。

そのうえで今後想定される課題を整理したり、ENWパートナーに意見を聞いたりということを重ね、ENWの運営について話すミーティングで皆さんと一緒に議論しながら組織としての対応方針を決定しました。

-今回のインボイス制度への対応方針はこちらですが、最初に「インボイスを理由とした値下げ交渉や、取引先の変更は絶対に行わない」と伝えていだたき、心強く感じました。また、インボイス制度への登録は「取引先がENWだけであれば、焦って登録する必要はない」と伝える一方、登録した人、する予定の人には簡易課税制度の適用を推奨しており、個々の状況への配慮が伝わりました。

(野澤)ENWでは変わらず「品質」を重視していること、業務の依頼判断にインボイス制度は影響しないことを、まず明確に伝えたいと思っていました。また、ENWパートナーのインボイス制度への対応方針は、取引先の数や状況によって異なるので不公平感のない形としたいという思いがありました。

-「経過措置期間中はインボイス制度への登録・非登録を問わずENWとの取引で発生した売上にかかる消費税納税額相当分をENWが負担するという方針には、驚きました。そして「ENWパートナーが大切にされている」ということを改めて感じました。

(野澤)インボイス制度により、日本在住のほぼすべてのENWパートナーの収入に、直接または間接的な影響が生じる状況となっています。そこで、少しでも経済的負担を減らしたいと考えました。一方で、すでに売上の90%以上を何らかの形でENWに関わる「ヒト」に還元している状況がある中で、組織が永続的に負担を肩代わりすることは難しいのが現状です。そこで、短期的な支援を行いつつ、中期的により良い状態の実現を共に目指すところを目標に据えました。

-その決意が、方針の結びにある「新たに発生する負担以上に売上がアップする状態を実現することを目指して、パートナーの皆さまと知恵と力を結集して取り組んでいきます」という言葉につながっているのですね。よく分かりました。

ENWパートナーに意見を聞きながら、インフレ対応策を決定

-インフレへの対応策を決めるまでの経緯を教えてください。なぜ対応策を実施しようと思ったのですか? どんな流れで進めたのですか?

(二口)現在、エネルギー価格の上昇をはじめとして、生活におけるあらゆる側面で物価高になっています。私たちの生活への影響を調べたところ、日本では実質賃金が低下し続けており、インフレを超える賃上げを実現するには、実質6%近い賃上げが必要です。欧米各国はそれ以上に厳しい状況で、欧州では10%を超えるインフレ率を超える時期もありました。

ENWパートナーのみなさんは変わらずクオリティの高い仕事をしてくださっているのに、生活の場ではENWからの収入の価値が下がっている。これは問題だと感じてENWの運営について議論するミーティングで問題提起をし、ENWパートナーへのインフレ対応策を決めました。

-具体的な内容は?

(二口)ENWパートナーに対し、下記のような経済的なサポートをおこなうことにしました。

一つは、誰もに等しく影響を与えるエネルギー価格の上昇に対するサポートです。一定期間において報酬支払が発生したENWパートナーに、一律で3万円を支払うことにしました。それぞれ在宅で仕事をしているので、本来であれば会社のオフィス関連費用となる部分を個人に負担いただいていることへの補填の意味合いもあります。

もう一つは、個々人に対するベースアップです。ただ、ENWは業務委託の形でお付き合いしているENWパートナーが圧倒的に多いので、社員に対して給与を一律にアップするような施策はできません。そこで、下記のような方法に決めました。

1.短期目標(2023年):対象期間に支払いが発生したENWパートナーに対し、期間中の報酬額の3%を年度末に追加で支払う(実質3%アップ)。

2.中期目標(~2025年):全てのENWパートナーの報酬単価および報酬総額が 21-22期比で10%以上アップすることにコミットする。
※それぞれで状況が異なるため、一人ひとりと時間をとり、目指す働き方の実現と報酬額の達成に向けた取り組み計画を策定。

(二口)目標を達成していくには、ENWの売上アップも同時並行で考えていく必要があるので、ENWパートナーのみなさんと一緒に、そのための戦略や新たな価値の創造を目指します。相対的に弱い立場にある人ほど押し寄せる影響にさらされやすいという困難な状況に対し、ENWが自らモデルとなるアクションと状況を体現することで、社会の変化を促したいと思っています。

ENWパートナーからの声

-今回の対応方針については、2023年3月31日にオンラインでENWパートナー向けの発表会が開かれました。当日参加できない方は録画を視聴しました。多くのENWパートナーに周知されたと思うのですが、どんな反応がありましたか?

オンライン発表会の様子

オンライン発表会の様子

(二口)ENWパートナーからは、こんな声が上がりました。匿名で、いくつかお伝えしますね。

・支援ファンドのご案内ありがとうございます。パートナーさんたちのことを考えての素晴らしい取り組みですね! エネルギー価格上昇、ママ友たちとも話題になっております。会社からのこのようなご提案はとても励みになります。

・説明会では、エコネットワークスの方針についてご説明いただきありがとうございました。エネルギーファンドやインボイス制度のことなど、いろいろと考えてくださっているのだなぁと思いました。改めて、すてきなチームにご一緒させていただいていることに感謝いたします。 これからもがんばります。

・ありがたくお受けしたく思います。エネルギー価格の上昇は本当に深刻で、近ごろは光熱費の明細書を見るたびにため息です。持続可能の観点から、常にパートナーに温かいサポートをしてくださり感謝しております。

・Thank you very much for thinking about rising energy costs and forming this support fund! I would definitely like to apply for it. Our energy provider actually went bankrupt last year so we had to join a different provider at a higher price, and unfortunately because of the way electricity prices are determined in Germany, the price of renewable energy was also negatively affected by the war in Ukraine.Thank you very much again, I really appreciate it!

取材を終えて

私が今回の発表を聞き、最初に浮かんだのは「真摯」という言葉でした。みんなにとって納得感が高い対応策で、「個」を大切にするエコネットワークスらしいやり方だとENWパートナーの一人として感じました。財源に関しても包み隠さずしっかり伝えていただき、ENWへの信頼がさらに増しました。

「個」を大切に、誰も取り残さない施策を進めていく。そんな真摯な組織のあり方が、他の組織にも広がっていくことを願っています。

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