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ENWの組織カルチャーを考える 中期経営計画から見えてきた現在地
先行きが不透明な今だからこそ、企業文化を革新しよう――。こんな掛け声を耳にする機会が増えてきました。でも、「わが社の企業文化はこれです!」と明確に示せる組織はどれぐらいあるでしょうか。まして、そのスピリットが従業員など一人ひとりに浸透している組織となると、心もとない方が多いのではないでしょうか。
かくいうエコネットワークス(ENW)もその1つ。何となく共有している文化はあるような気がしつつも、それを明確な言葉にできているわけではありませんでした。そこで、こちらの記事でご紹介したように、中期経営計画のフェーズ2におけるテーマの1つに「文化」を設定し、約半年にわたってENWの企業文化を考えるオンラインセッションを行ってきました。パートナー¹全員に呼びかけ、各回8〜12名の有志が参加しました。時間を割いてもらうことに対する多少の金銭的ベネフィットは用意しましたが、「業務」というより、あくまで自発性に委ねた任意の参加という形です。
本記事では、文化チームのテーマオーナーである曽我 美穂さんのサポート役として参画した筆者が、全4回の模様をダイジェストで振り返りながら、対話を通して見えてきた気づき、また今後の方向性について私見を交えてレポートします。
¹パートナー:ENWの仕事をする人。雇用契約者、業務委託契約者の両方を含む。
執筆:小島 和子
生まれも育ちも東京のフリーランス。編集・執筆・出版プロデュースが得意。
「文化を考える」ってどういうこと?
文化チームとして当初掲げた目標は、ENWのカルチャーを言語化して、私たちパートナーが誇りを持って語れるようになることでした。それによって、クライアント企業の方々にENWのことをよく知っていただけるようになり、新たなパートナーをお誘いする際にも説明しやすくなるだろうと考えたのです。

最初に掲げていた計画
第1回のセッション(2021年5月25日)では、ウォームアップとして『カルチャーモデル―最高の組織文化のつくり方』(唐澤 俊輔 著、ディスカヴァー・トゥエンティワン 刊)の読書会を行いました。マクドナルドやメルカリで、組織改革やカルチャーの浸透に貢献してきた著者が、ビジネスモデルだけではなく、カルチャーモデルの設計こそ、「いい会社」の必須条件だと述べている本です。カルチャー設計から浸透までのフローをフレームワーク化し、組織タイプごとのポイントが分かりやすくまとめられています。本書の感想を共有し、まずは組織文化について、参加パートナーの意識を合わせるところからスタートしました。
翌月の第2回のセッション(6月30日)でも、再びこの本に示されていたフレームワークを参考に、現状のENWにある文化的な要素の棚卸しに取り掛かりました。議論の素材とし活用したフレームの1つに、「経営スタイルの4象限」があります。著者によれば、さまざま企業のカルチャーを検証した結果、経営層のリーダーシップスタイルは、中央集権型か分散型か、変化志向か安定志向か、という4つに分類できます。ではENWはどうだろう? と話してみると、安定志向×分散型の「複数リーダー経営」と、変化志向×分散型の「全員リーダー経営」の2つに意見が分かれました。文化を考える前に、そもそも経営スタイルの認識もまちまちなのでした。

第2回のセッションの様子
こうした対話を通して改めて気づくのは、多くの企業と違い、ENWにはごく少数(正確には、2022年4月現在3名)の「社員」しかおらず、事業の大部分はフリーランスの「パートナー」が担っている点です。さらに、コロナ禍以前からリモートワークを主体としており、同じプロジェクトに関わるパートナー同士でさえ、対面で顔を合わせる機会はめったにありません。そのため、ミッション、スピリット、ワークスタイル、ワークポリシーは定められていますが、これを日頃どこまで意識するかはパートナー次第。その結果、同じ「情報」を共有しているつもりでも、その捉え方にどうしても温度差が出てしまうのです。
こうした環境にあるなか、2回のセッションを経て文化を考えるムードは高まりつつありましたが、まだ目指すべき方向性がクリアになっているとは言い難い状態でした。が、そのモヤモヤ感も含め、何らかの形で言葉にしていこう。その上で、ENW内外で共有を図っていきたい。運営チームは、そんな思いを抱いていました。
言葉にできることと、言葉にしづらいこと

文化の本質のモデルを共有しながら話し合いました。
少し間を空けて開催した第3回のセッション(2021年10月29日)では、「本質に迫ろう」というテーマを掲げました。ENWのパートナー同士で話しているとき、「それって本質的にはどういうこと?」という具合に、何気なく口にしたり耳にしたりすることが多い気がしたため、組織カルチャーの文脈で「本質」を追求しようと試みたのでした。
「ENWが大事にしている本質とは?」など、一見するとずいぶん抽象的な話題で対話を進めるなか、筆者はあるパートナーの言葉にハッとしました。「本質はこれ、と決めてしまうと、そこで思考が止まってしまうのでは?」というのです。あるべき本質を「ゴール」として探るのではなく、そこに至る「プロセス」のほうが大事なのかもしれないと気づかされました。
また、「文化はどこまで言葉にできるのか? あるいは、すべきなのか?」という意見にも考えさせられました。そもそもは、ENWのカルチャーを言語化しよう! ということで始まったセッションでしたが、運営チームとしては第3回にしてまさかの展開です。
いっこうにアウトプットの形が見えてきませんが、性急に「落とし所」を探そうとしなくていいのかもしれない。言語化する・しないの二択で考えないほうがいいかもしれない。徐々にそうした思いが強まってきました。言葉にできそうなことは、いったん言葉にして動き出してみる。一方で、言葉にするとこぼれ落ちてしまいそうな「ゆらぎ」や、言葉の外にこそある「余白」も大切にするべきではないか。そんなふうに感じ始めていました。
アナログな「肴」をネタに話が弾む
とはいえ、中期経営計画で予定していたセッションは残り1回。当初予定していたほどにきっちりした言語化に至らないとしても、何らかのキーワードやキーフレーズを見いだせれば、とは思っていました。
そこで第4回のセッション(2021年12月3日)に向けて準備したのが「テキストマイニング」と「マインドマップ」です。第1〜3回の議事録を素材に、繰り返し登場していた言葉を発掘(マイニング)してみると、名詞としては「本質」「浸透」など、動詞では「立ち止まる」がよく使われていたことがわかりました。さらにそうした単語たちをマインドマップふうに可視化したものをたたき台に、第4回のセッションに挑みました。

実際に使用したテキストマイニング

テキストマイニングをもとに筆者が作成したマインドマップ
流行りのかっこいいカラフルなマインドマップにできたわけではなく、「こんなアナログの素人っぽい絵で果たしてみなさんに伝わるのか!?」と心配だったのですが、幸い杞憂に終わりました。自分たちの対話の「履歴」が可視化されていると話しやすいようで、マインドマップを「肴」に盛り上がりました。どんな発言があったのか、ほんの一部ですが紹介します。
「立ち止まる」「動き続ける」という一見相反するものを持っているENWは、生き物っぽい組織なのでは?
このセッションはまさに「立ち止まる」機会だと思う。オンライン中心だと、通じているつもりで通じてない、ということになりかねない。
「成長」にはポジティブでないイメージもある。「成長」をゴールにするのではなく、よりよい社会を追求し続けることが組織文化として大切。
全4回のセッションを振り返ると、「言葉にできる」以外に、もしくはそれ以上に大事なことがある、という共通認識が醸成されたように感じます。たとえ相反するように見えることがあっても、それを内包しつつ、ともあれ進んでみよう! という態度。あるいは、「ゴール」への到達を急ぐより、目指す「プロセス」を大切にする姿勢、とも言えそうです。
また、さまざまな角度から組織文化を考える過程で、互いに対する理解が深まり、信頼感が確実に高まりました。ものの感じ方や表現の仕方はそれぞれで、必ずしも「共感」とくくれることばかりではありません。それでも、人と違う意見を口にしても大丈夫、むしろ違う視点からの気づきが面白い、という雰囲気が(以前からありましたが、さらに)高まった実感があります。
中期経営計画という本来ビジネスライクな文脈で、ENWがこうした対話の場を設ける組織であること、さらに時間を割いて参加するパートナーが何名もいること、それ自体がENWの文化を体現しているのかもしれません。
対話を引き出すツールとしての「成果物」
結局、文化チームの「成果物」と言えるのは、第4回で用いたテキストマイニングとマインドマップのみです。ENWのカルチャーを言語化して、ENW内外の方々と共有するという当初の目標からは、やや離れたところに着地した感は否めません。が、今後に向けた地ならしは確実に進んだと思います。どう展開するのがいいのか、今まさに思案中です。
セッションに参加する機会のなかった方々に、今回の成果物だけをお見せしても、正直、伝わるものは少ないでしょう。だからこそ、まずは対話を続ける必要があるのだろうと思います。例えば、、新たにENWとご縁の生まれた(生まれそうな)方に先のマインドマップをお見せした場合、
「ENWって、こんなカルチャーの組織なんですよ!」
「何ですか、これ??」
「あ、分からないですよね、これはですね……」
などと、パートナーそれぞれが自分の言葉で伝えざるを得ないでしょう。つまり、今回の成果物は、いわば「もれなく対話がついてくる」という条件付きの成果物です。
本記事を読み、「何ですか、これ??」と思った方、新たな対話のプロセスをご一緒しませんか。少しでもご関心があれば、ぜひご一報いただけたらうれしいです。