Sustainability Frontline サステナビリティをカタチに
国際環境NGO Mighty Earthに聞く、食品業界のメタン対策最前線
メタンガスは、強力な温室効果を持ちながら大気中の滞留期間が短く、削減効果が速やかに現れます。気候変動の影響緩和に向けて、いわば「緊急ブレーキ」として注目されています。メタンの排出源の一つは食品業界です。2026年3月公表のSASB(サステナビリティ会計基準審議会)「食肉、家禽及び乳製品」セクターの改定案においても、メタン排出量の割合が開示指標の一つとして提案されました。
こうした動きを踏まえ、食品バリューチェーンに関わる企業は、メタン排出削減に向けた目標設定や具体的な施策に向けて、どのような次の一歩を踏み出すべきでしょうか。
7月に開催した「リサーチラボ:SASB改定案の背景を読み解く~食品のメタン対策、企業はどこから始めるか」では、国際環境NGO Mighty Earthから東アジアマネージャーの朴梅花さんをお招きし、お話を伺いました。同NGOでは今年3月、アジアの大手スーパーマーケット8社を対象に気候変動対策を評価したランキングを発表しています。
メタン削減における食品小売り企業の役割
朴梅花さん:
食糧システムの変革において、食品小売り企業は調達先と消費者をつなぐ、中心的な立場にあります。牛肉・乳製品・米といったメタン排出量の高い食品を日々調達し消費者に届けているだけでなく、価格設定や商品構成、プライベートブランドを通じて「消費者の選択」そのものに影響を与えることができるからです。加えて、食品小売り企業のGHG排出量の90%以上をScope3が占めており、削減の大きな鍵になっています。
Mighty Earthの朴梅花さん
Scope3のメタン排出削減・開示に向けて実践できること
例えば、食肉の代わりにプラントベースフードを取り入れて消費者の選択肢を広げたり、低メタン米を導入したりといった商品面で工夫を行うこと。さらには再生型農業や森林破壊ゼロの調達、トレーサビリティ向上といった生産段階でのメタン削減の取り組みを期待します。
アジアの大手スーパーマーケットを対象とした調査では、メタンの削減目標・開示を行っている企業はゼロでした。そうした中でも、イオンは畜産由来のメタンによる気候変動への影響を深く認識しており、消費者に持続可能な食生活を呼びかけるなど、ランキングではトップになりました。
国際NGOが共につくる、企業のメタン開示への道筋
Mighty Earthとの対話を通し、マルフリグというブラジル大手の食肉企業は、2035年までに自社サプライチェーンから排出されるメタンの33%削減を宣言しました。発表の場は、2025年のCOP30におけるMighty Earth主催のイベントでした。
また、オランダの大手スーパーであるアルバートハインは、Mighty Earthや消費者団体とのエンゲージメントの結果、Scope3のメタン排出量を小売企業として世界で初めて開示することにつながりました。
Mighty Earthのスタッフと企業の担当者の間で普段から信頼関係が育まれていることが一つ。また、企業自身もESGで業界をリードしていきたいという意思を持っていることが成功につながった理由ではないかと思います。
広がりを見せる日本の食品企業の取り組み
日本国内で取り組みを進めている企業の一社が森永乳業です。バイオガス発電や肥料化による牛のふん尿からのメタンの削減、紅茶カスを再利用した飼料を使うことでげっぷから出るメタンを削減するといった実証実験が進んでいます。
牛が好んで食べることができるか、消費者だけでなく、酪農家の理解をどう得て、どう協働していくかという「エコシステム全体」をつくっていくことが、日本の畜産におけるメタン削減の取り組みを進めていく上で重要なポイントとなります。
リサーチラボ 食品分野のメタン削減・開示への道すじを共に描くネットワーク
ENWではこれを機に、食品に関連するメタン排出削減の取り組みを後押ししていきます。組織や肩書を離れ、個人として関心を持つ皆さまと垣根を越えて、一緒に課題を研究するゆるやかなネットワークづくりを進めていきます。
最初の取り組みとして、ご自身の業務において活用いただけるよう、政策や企業の取り組み、NGOの動向といった国内外の最新情報を月一回程度、お届けしていきます。また勉強会や組織間の対話セッション、交流会などの企画も検討していきます。
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