Sustainability Frontline サステナビリティをカタチに
CO2だけじゃない 注目高まるフードバリューチェーンのメタン対策

(Photo by Screenroad via Unsplash)
SASB(サステナビリティ会計基準審議会)スタンダードは、産業別に財務関連サステナビリティ情報の重要なトピックと指標をまとめた開示基準です。その一部セクターに関する改定案が、2026年3月に公表されました。「食肉、家禽及び乳製品」セクターの改定案では、温室効果ガスの指標として、メタンの割合を開示することが新たに提案されています。
高まるメタンへの注目と企業の対応状況
食品業界における新たな気候課題として急速に関心が高まっているメタン。国際環境NGOのMighty Earthの報告書には、メタン対策の重要性と、食のバリューチェーンに関わる企業の対応状況がまとめられています。
- メタンの大気中での滞留期間は短いものの、温室効果は強力です。20年スパンではCO2の80倍にものぼり、産業革命以降の地球温暖化の要因のうち30%をメタンが占めているといわれています。その分、対策をすることによる効果の即効性も期待されています。
- 人為的なメタン排出の約40%が農業・食に関わるもので、そのうち76%が食肉や乳製品といった畜産から、21%が水田からとなっています。
- 酪農からのメタン排出削減に取り組むDairy Methane Action Alliance加盟企業であるダノンやクラフト・ハインツなど数社のグローバル企業は、排出削減目標を前倒しで達成するなど取り組みを意欲的に進めています。
- 一方、フードバリューチェーンの下流に位置する小売企業でのメタン対策は、ほとんど進んでいません。調達を通じた影響力を発揮することが期待されています。
期待されるメタン削減の取り組みー食品メーカー
食品メーカーとしての主な対策の一つが、牛のげっぷから出るメタン削減です。明治グループ、森永乳業、味の素やスターゼンなどの日本企業もメタンの排出を抑える飼料の開発や導入に取り組んでいます。
ネスレは2026年6月に、Nestle Dairy Plan Reportを公表しました。同社はこれまでもカカオの持続可能な調達に向けたカカオプランを推進してきましたが、本報告書は別の重要原材料である持続可能な乳製品サプライチェーンの実現に向けた戦略の進捗をまとめたものです。メタンを含む温室効果ガス排出の削減だけでなく、品質、農家の生活の質、アニマルウェルフェア、再生農業・自然を一体の枠組みとして捉え、酪農家を中心とした統合的なアプローチで、バリューチェーン全体で取り組んでいる点が特長です。
期待されるメタン削減の取り組みー小売企業
小売企業には、まずメタン排出削減に向けた目標設定が期待されます。その際にベンチマークとなるのが、2030年に2020年比で30%削減を目指す国際枠組みのGlobal Methane Pledge(日本を含む約160ヵ国が署名)、そしてPlanetary Health Dietです。
Planetary Health Dietは、EAT-Lancet委員会が策定した食品構成の指針です。健康的な食事と、持続可能な食糧生産と環境負荷(プラネタリー・バウンダリー)の二つの観点から、科学的に推奨されるバランスを示したものです。最新の2025年版では、ナッツや豆類を含む植物性食品を60%以上とし、赤身肉や乳製品は少量とすることが推奨されています。小売企業は自社が提供する食品の販売構成を、このベンチマークの基準に近づけていくことが期待されます。
日本企業として、どこから取り組むか
垂直統合型のサプライチェーンや広大な牧場を持つ欧米企業と、小規模な酪農家が多く地域ごとの中間組織を介する日本企業では、サプライチェーンのあり方が異なります。また基本的な食生活のパターンの違いもあります。そうした前提の違いも踏まえ、食のバリューチェーンに関わる企業が、世界の取り組みから学び、どのように次の一歩を踏み出すべきか。
エコネットワークスでは、上記テーマについて考える勉強会を開催しますので、関心のある方はぜひご参加ください。