相次ぐ気候目標のグリーンウォッシュ判定 訴訟事例から見えること

(Photo by fotofabrika via AdobeStock)

EUを筆頭に世界的にグリーンウォッシュに対する法規制が強化される中、海外では訴訟事例が増加しています。製品・サービスに関する広告だけでなく、企業の目標や方針などにおける環境主張もその対象となることがあります。特にカーボンニュートラルなどを掲げる気候目標は、今や多くの企業にとって最重要目標の一つであり、その主張には大きな責任が伴います。

問われる実施計画、実態との整合性

ここ数年で起きたいくつかの訴訟事例を見てみましょう。実現に向けた計画がしっかりと検証され現実的なものであるかどうか、事業の実態とかい離がないかどうかなど、その中身や裏付けが厳しく問われています。これらの訴訟は、各国の消費者保護や不正競争防止に関連する法律などに基づいて判決が下されています。仮に投資家向けの発信を意図していたとしても、ウェブサイトに掲載された情報は消費者をはじめあらゆるステークホルダーがアクセスできるため、消費者保護の観点から規制対象と判断されうるのです。

  • 【ケース1】エネルギー(欧州/2025年)
    同社ウェブサイト上で、カーボンニュートラル目標とともに「気候対策を戦略の中核に据え、クリーンかつ安全で手頃な価格のエネルギーを提供する」と記載する一方で、事業では石油・ガス生産を拡大する方針を維持していることが消費者に誤解を与えるとして、複数の環境NGOが共同で提訴。該当表示の中止が命じられた。
  • 【ケース2】外食チェーン(欧州/2026年)
    環境消費者団体が、同社ウェブサイト上に記載された「2050年カーボンニュートラル目標」は、2030年以降の実施計画が不明確で検証が不足しているとし、グリーンウォッシュに該当するとして提訴。グリーン電力、包装の最適化、自転車配送といった個々の事例が定量化されておらず、気候対策のコミットメントを完全に裏付けるには不十分と指摘した。同社は、目標がSBTi認定を受けていることにも言及し係争中。
  • 【ケース3】食肉(米国/2024年)
    米国の広告自主規制機関が、同社の「2040年までにネットゼロを達成する」という主張について、実現に向けた明確な計画が策定されておらず、進捗を裏付ける具体的な根拠も示されていないとして主張の中止を勧告。これを受け司法当局が同社を提訴。「誓約」や「約束」ではなく「目標」として提示すること、排出量削減目標の達成に向けて「措置を講じている」と表明する場合はその措置を開示することで和解合意した。この他にも類似した事例では、環境保護団体が米国食肉大手会社に対して、2050年ネットゼロ目標が実施計画や適切な措置が行われていないとして提訴。「2050年までにネットゼロ」および「気候変動に配慮した牛肉」の主張を中止し、専門家による検証なしにはこれらの主張を更新しないことで和解合意した。

カーボン・オフセットを認めない国際的な流れ

また、気候目標については、国際的な潮流として自社による実質的な排出削減が基本とされ、カーボン・オフセットを認めない動きが強まっています。例えば、SBT短期目標にはオフセットによる削減を含めることができません。また、2026年9月に適用されるEU「不公正取引慣行指令(UCPD)」の改正では、カーボン・オフセットに基づいて製品のカーボンニュートラルを主張することが禁じられます。こうした中で、次のような訴訟事例も起きています。

  • 【ケース4】消費財(欧州/2025年)
    同社ウェブサイトに掲載された「2050年カーボンニュートラル目標に関する主張」について、環境NGOが「自社によるCO₂排出量削減のみによって達成され、CO₂オフセット手段(CO₂証書の購入など)を用いないという誤った印象を与える」として提訴。同目標はSBT認定を受け、ウェブサイトには目標に関する詳細情報としてサステナビリティ報告書へのリンクは張られていたが、裁判所は当該ウェブサイト上では明確に内容が記載されていないとし、判決で主張の差し止めを命じた。

目標の下方修正がはらむリスク

気候対策の中間目標年とされることが多い2030年が数年後に迫る中、企業が目標の下方修正を行うケースもありえます。しかし、達成前にESG目標を変更することは、説明責任を回避する「グリーンリンシング(greenrinsing)」と呼ばれ、グリーンウォッシュの一手法として批判の対象になります。その観点からも、具体的な実施計画を伴う実証された目標の設定が欠かせません。

  • 【ケース5】飲料(米国/2023年)
    同社の使い捨てプラスチックボトルによる公衆衛生や環境への悪影響について、司法当局が提訴。その中で、同社がバージンプラスチック削減目標を繰り返し修正し、目標に向けて着実に進捗しているかのような誤認を消費者に生じさせたという点も指摘された。訴えは却下されたが、司法当局は控訴。

リスクを防止し、信頼性・価値を高める

こうした訴訟事例からも明らかなように、特にグローバル展開する企業は、各国の関連法規制や訴訟事例を踏まえた法的リスク対策が必須といえます。また、日本においても2026年3月に改定された「環境表示ガイドライン」(環境省)で、企業姿勢や事業活動に関する環境主張についても対象となることが改めて強調されており、根拠に基づく訴求がますます重視されていく流れにあります。

気候目標は、企業のサステナビリティ活動の看板ともいえます。その設定やロードマップ策定、測定・進捗報告などのすべての段階において、根拠のある信頼性の高い情報開示を行うことが欠かせません。それがステークホルダーにとって適切な判断を行うための土台となり、また企業としての価値向上にもつながっていくでしょう。

実務においては、どのような情報をどこに記載するか、どのような表現であれば消費者に正しく伝わるかなど、様々な観点で精査が必要になります。エコネットワークス(ENW)では今後、具体的な表現・記載方法にまつわるNG事例と対策についても紹介していきたいと思います。


ENWでは、グリーンウォッシュに関する方針策定や体制構築から、社内啓発、適切な発信コンテンツの分析・企画・制作まで、一貫した支援を行っています。また、組織を超えて様々なメンバーが集う学びと対話のプラットフォーム「Wave With(ウェーブ・ウィズ)」の一環で、グリーンウォッシュをテーマにしたセッションも多く行っていますので、ご関心がありましたらお気軽にご相談ください。

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支援事例:
・社内対話・企業間対話セッションで、効果的な実践へ
・メーカー「従業員向け環境コミュニケーションガイドブック」企画・制作
・メーカー「グリーンウォッシュ対策ハンドブック」日本語版制作

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