環境表示ガイドラインが13年ぶりに改定 求められるグリーンウォッシュ対策は?

(Photo by vegefox.com via AdobeStock)

グリーンウォッシュに対する法規制がグローバルで強化される中、日本における環境表示に関する網羅的なガイドラインである「環境表示ガイドライン」(環境省)が、2026年3月末に13年ぶりに改定されました。今後押さえるべきポイントは、どこにあるのでしょうか。

改定の注目ポイントは

環境省の「環境表示ガイドライン」は、あくまでガイドラインであり法的拘束力はありません。ただ、環境表示も規制対象となる「景品表示法」が製品・サービスのみを対象とするのに対し、同ガイドラインはこれに加えて、製品・サービスに直接的に関係のない環境表示(事業活動、イメージ広告、企業姿勢など)も対象としています。そのため、企業のグリーンウォッシュ対策においては参考にすべき重要なガイドラインといえます。改定にあたって注目すべきポイントを一部紹介します。詳細は、同ガイドラインをご参照ください。

  • 【ガイドラインの位置付け】
    今回の改定では、環境表示に関する国際規格「ISO/JIS Q 14020シリーズ」に準拠することを改めて明示した上で、企業に対しこれに沿った環境表示を求めています。
  • 【対象】
    景品表示法の対象となる製品・サービスに関する環境表示に加え、製品・サービスに直接的に関係のない環境表示(事業活動、イメージ広告、企業姿勢など)も対象。今回の改定版では、後者も対象になることを改めて周知しています。
  • 【5つの基本項目】
    ISO/JIS Q 14021(自己宣言による環境主張)に基づき、「5つの基本項目」を定めています。
    ①あいまいな表現や環境主張は行わないこと
    ②環境主張の内容に説明文を付けること
    ③製品のライフサイクル全体を考慮すること
    ④環境主張の検証に必要なデータおよび評価方法が提供可能で、情報にアクセスが可能であること
    ⑤製品または工程における比較主張はLCA評価、数値等により適切になされていること

    ➤注目ポイント:
    ・今回の改定では、これまでの要求事項に③「製品のライフサイクル全体を考慮すること」を新たに加えた上で基本項目が示され、その重要性が強調されています。ライフサイクル全体での環境効果やトレードオフなどの確認をしっかりと行う必要があります。
    ・①「あいまいな表現や環境主張は行わないこと」では、今回NGな表現について事例やイラストが示されました。「地球にやさしい」「環境にやさしい」「グリーン」「持続可能(サステナブル)」などは原則使用しないこと、使用する場合は必ず合理的な説明文を付けることが求められています。その他にも、使用にあたり要求事項がある16の特定用語(「リサイクル可能」「省エネルギー」「省資源」やカーボンニュートラルを含む「温室効果ガス排出に関する主張」など)も改めて掲載されています。
    ・④の「情報へのアクセス」という点も重点的に解説されており、消費者の誤認を防ぐ上で、環境訴求の根拠情報に容易にアクセスできるようにすることが今後ますます重要になるといえます。

  • 【自主基準によるシンボルマーク】
    様々なマークやラベルが乱立する中、特に認証制度によらない、自社独自あるいは民間団体・NPOなどによるシンボルマークを自主的に表示する場合、消費者にとってそれらが信頼に足るものか判断しづらく、誤認を生じさせる可能性があるため、使用に関する注意事項が掲載されています。

    ➤注目ポイント:
    ・自主基準によるシンボルマークをISO/JIS Q 14021規格に基づいて使用することを、今回改めて明示しています。
    ・なおEUでは、不公正取引慣行指令(UCPD)改正により、第三者認証制度に基づかない、または公的機関によって確立されていない持続可能性ラベルは不公正な商慣行とみなされ、2026年9月から罰則の適用対象となります。グローバルな規制動向も踏まえると、自主基準によるシンボルマークは可能な限り避けることがリスク防止になるといえます。

  • 【カーボン・オフセットやマスバランスなどへの注意喚起】
    今回の改定では、誤認を生じさせやすいと考えられる取り組みとこれに伴う環境主張に関して、参考情報として注意喚起が加えられました。

    ➤注目ポイント:
    ・カーボン・オフセットの取り組みやこれに伴う主張は、自社による排出削減が最重要であることを前提に慎重に行うことや国際規格や国内指針に準拠することなどが強調されています。また、マスバランス方式についても適切な表示や国内外の基準に準拠することが示されています(「『マスバランス方式』グリーンウォッシュのリスクは?」の記事もご参照ください)。
    ・なおEUでは、不公正取引慣行指令(UCPD)改正により、製品レベルでのオフセットによる主張が2026年9月から禁止されるなど、国際的にカーボン・オフセットを活用した取り組みや主張に対して厳しい対応が進んでいます。

  • 【グローバル動向も記載】
    先述の通り、EUを筆頭に国際的な規制強化がさらに進んでいることから、今回の改定では各国の法規制やガイドライン動向を参考情報として別冊に掲載しています。

今後に向けて押さえるべきことは……

・社内への周知・浸透の好機に

環境に関する訴求は、今やサステナビリティ推進部署だけでなく、様々な部署で行われている一方で、社内におけるグリーンウォッシュに対する認識や情報にはばらつきがあるのが実態です。今回の改定によって、環境表示に関するリスクや注意点がより具体的で分かりやすく提示されたことから、企業においてはこれを全社に周知・浸透させる好機と捉え、社内発信や勉強会、ガイドライン策定などを進めることをおすすめします。

・社内方針を定める重要性

環境表示ガイドラインは、改定により活用しやすくなったとはいえ、依然として法的拘束力がありません。そのため社内で対策を進める際には「最低限の法令順守レベル」を目指すのか、「グローバルな水準も踏まえた上で先行してリスクの予防に努めるレベル」を目指すのかについて、各所で議論が生じるケースが多くあります。自社としてどのレベルを目指すのかを含め、社内方針を早い段階で定めて示すことが欠かせません。

・さらに高い水準を常に意識すること

先述の通り、EUをはじめグローバルではさらに厳しい法規制が進んでおり、これらの地域の企業では対策が急速に進められています。これを踏まえると、今回のガイドラインの改定内容は十分とはいえません。改定に際するパブリックコメントにおいても、グリーンウォッシュ防止に取り組んできた「一般社団法人JELF(日本環境法律家連盟)」や、「気候ネットワーク」「ClientEarth」といった主要NGOから、さらに高い水準を求める意見が多く寄せられました。今後日本でも規制強化の流れが強まることは確実であり、こうしたさらに高い水準を意識しながら、先んじて取り組みを進めることが重要です。

・リスク予防だけでなく価値向上の視点も

グリーンウォッシュ対策を強化していくにあたり、訴求における制約が多くなるため社内での反発を招くケースもあります。社内に向けては、リスク予防の観点だけでなく、環境課題の解決に真に貢献する企業として、信頼性と価値を向上する機会でもあることをしっかり伝えていくことが、前向きで迅速なアクションを進める上でカギとなります。

宮原桃子 コンテンツプロジェクトマネージャー/ライター)


▼グリーンウォッシュ対策に関するウェビナーを開催します

「今求められるグリーンウォッシュ対策とは?~環境表示ガイドラインの改定ポイントも解説」

【日時】5月20日(水)16:00~16:40
【テーマ・概要】
2026年3月に13年ぶりに改定された「環境表示ガイドライン(環境省)」のポイントを交えながら、今企業に求められるグリーンウォッシュ対策について考えます。環境問題に取り組む法律家のNGO「一般社団法人JELF(日本環境法律家連盟)」と、企業のグリーンウォッシュ対策支援に取り組むエコネットワークス(ENW)の共催で開催します。

【参加費】無料
【お申込み】こちらのサイトからお願いいたします。


エコネットワークス(ENW)では、グリーンウォッシュに関する方針策定や体制構築から、社内啓発、適切な発信コンテンツの分析・企画・制作まで、一貫した支援を行っています。また、組織を超えて様々なメンバーが集う学びと対話のプラットフォーム「Wave With(ウェーブ・ウィズ)」の一環で、グリーンウォッシュをテーマにしたセッションも多く行っていますので、ご関心がありましたらお気軽にご相談ください

支援サービス:  詳細はこちら
支援実績:
社内対話・企業間対話セッションで、効果的な実践へ
メーカー「従業員向け環境コミュニケーションガイドブック」企画・制作
メーカー「グリーンウォッシュ対策ハンドブック」日本語版制作

 

 

 

このエントリーをはてなブックマークに追加