Sustainability Frontline サステナビリティをカタチに
サーキュラーエコノミー法が目指す二次原材料確保の戦略 企業が取り組むべきことは
地政学リスクの高まりによって重要鉱物資源などの安定調達が脅かされる中で、二次原材料の使用拡大は企業全体にとっての共通課題となりつつあります。そうした中、EUは資源循環を生き残りのための産業競争戦略と位置づけ、2026年には新たなサーキュラーエコノミー(CE)法(循環経済法)の提案が控えています。
これを受け、エコネットワークス(ENW)ではEUが資源循環を加速させるに至った戦略的背景を読み解くリサーチラボを2月に開催しました。
環境・成長戦略から産業競争戦略へと変化したEUのサーキュラーエコノミー政策
EUでは現在、第1期フォン・デア・ライエン政権(2019-2024)が欧州グリーンディールの下で整備した各種法令が施行フェーズに入り、「サーキュラーエコノミー実装の共通OS」として機能し始めています。
- 設計段階:エコデザイン規則(2024)
- 販売・消費段階:修理する権利指令(2024)
- 廃棄段階:改正廃棄物輸送規則(2024)、包装および包装廃棄物規制(2025)
- 情報開示/資金調達段階:タクソノミー規則(2020)、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)(2023)
- 調達~製造・流通段階(間接的):企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令(CSDDD)(2024)
注目すべきは、地政学リスクや供給網の不安定化を受け、政策の力点が「環境保護と経済成長の両立」から、生き残りをかけた「産業競争戦略」へと移行した点です。第2次フォン・デア・ライエン政権で掲げられたクリーン産業ディール(2025)では、エネルギーコストの削減と脱炭素化を同時に進め、希少資源の域内循環を強化することで、産業の基盤となる資源供給を向上させる戦略を示しました。その一環として、EU域内の資源循環利用率(全材料使用量に占める循環利用された材料[リサイクル材]の割合)を2024年の12%から、2030年には24%へと倍増させる野心的な目標を掲げています。
2026年提案予定のサーキュラーエコノミー法では、二次原材料がEU域内でスムーズに流通するための市場基盤が整備される予定です。具体的には、廃棄物の回収・リサイクル強化、加盟国ごとに異なる廃棄物分類や輸送ルールの改善、製品中の二次原材料の使用率拡大などが議論されています。日本企業にとっては、二次原材料の使用がEU市場参入の必要条件となるとともに、高品質な二次原材料の製造技術を持つ企業にとっては大きな機会となる見込みです。
二次原材料の流通量拡大、企業はどこから着手するか
実際に二次原材料の割合を増やしていくためには、品質・技術・調達(回収)・コスト・市場・制度といった複合的な観点からの検討が必要です。バリューチェーン全体を見渡して、中長期視点でロードマップを作成し、数年単位で段階的に取り組みを拡大させていくことが求められます。
独Audiは、2023年にMaterialLoopプログラムを立ち上げ、二次原材料活用に向けた技術的な検証から着手しました。使用済み車両から資源を回収し、アルミニウムの60%以上、鉄の85%以上が新車生産に再利用可能なことを確認しました。2025年からは、実際のサプライチェーンに実装し、経済的にも実現可能なスキームの構築を進めています。まずは数千台の使用済み試作車から鉄スクラップを再生し、サプライヤーが二次原材料にアクセスできるデジタルプラットフォームの実証に取り組んでいます。
米Appleの取り組みも参考になります。同社は2024年時点で、全製品における二次原材料・再生可能資源の割合が24%に達し、バッテリーでの再生コバルトや磁石での再生レアアースの使用は99%を達成しています。当然一朝一夕で達成できたわけではなく、環境報告書を遡ると、バリューチェーン全体での収益化との両立に向けた取り組みの発展の過程がよく分かります。
全社的な戦略推進に不可欠な社内意識の変革
施策の推進にあたっては、サプライヤーをはじめ協業先との提携は欠かせません。しかし、より重要となるのが社内の関係部門の巻き込みと意識変革です。これまで数社でCEの社内浸透をご支援してきましたが、カギとなるのは循環と経済成長の同時実現を目指すCEの基本概念、CE実装の基盤となるOS、そして自社のビジネスモデルへの落とし込みに対する理解だといえそうです。
執筆:野澤健、佐原ツェルマン理枝
(Thumbnail photo by Ochir-Erdene Oyunmedeg via Unsplash)