Sustainability Frontline サステナビリティをカタチに
日本企業とアニマルウェルフェア 推進のカギは? 平飼い卵の事例から
5年ほど前の状況と比べ(世界最低ランクの日本 「平飼い卵」に見るアニマルウェルフェア)、スーパーなどで平飼い卵を目にすることが多くなってきました。平飼い卵を使った商品やメニューも増えています。皆さんの周りではどうでしょうか。
市場の約半分が平飼いへと転換している欧米諸国や、10%程度に至っているインドネシアや韓国に比べると、日本の平飼い卵の割合は約1〜3%ほどと低い水準にとどまっています。それでもこの間、一定数の日本企業がアニマルウェルフェアに関する方針を掲げ、マテリアリティ(重要課題)に組み込み、持続可能な原料調達の対象品目に定めるなどして、行動に移し始めたのは大きな変化です。
日本におけるこうした動きをさらに推進していく上では、企業とNPOとの建設的な対話・エンゲージメントが重要な要素の一つになります。
日本企業がNPOの協働エンゲージメントの対象に
この間、日本企業がNPOによる国際的なネガティブキャンペーンの対象となる例が複数ありました。対象となった企業では、結果として、取り組みが大きく進展しています。
立ち上げたのは鶏のアニマルウェルフェアに取り組む世界各地の約90のNPOが参加する連合体Open Wing Alliance (OWA)。これまでは欧米のグローバル企業を対象にキャンペーンが展開されてきましたが、一定の進展が見られる中、アジア企業が次の主要なターゲットとなりつつあります。最初に対象となったのはトリドールホールディングス(2022年)、そしてキユーピー(2024年)でした。
キャンペーンを受けて、トリドールホールディングスは2030年度末までに日本以外の地域で使用するすべての卵をケージフリー卵に切り替えることを宣言しました(日本は段階的に拡大)。キユーピーはさらに進んで、グローバル全体や米国・欧州での目標のほか、日本国内では2030年までにキユーピーマヨネーズで使用する卵の20%相当量のケージフリー卵を調達するとしました。目標達成に向けて、サプライヤーの拡大と市場づくりへの取り組みを始めています。
NPOとのエンゲージメントを社内変革の機会に
企業の立場からすれば、ネガティブキャンペーンの対象となることは当然避けたいものです。一方で、仮にそうした対象となったときには、変革のための機会と捉えて取り組んでいくことが大切です。サステナビリティ領域で先進的といわれる欧米企業は、市民社会との対話と対応を積み重ねることで、今の地位へと至りました。
そのためには日常的にNPOとの対話の機会をつくっているかがカギとなります。アンケートや問い合わせが届くと、つい身構えて防御反応を取ってしまいたくなるかもしれません。しかし、課題解決に向けて協働するパートナーと捉えて、まずは対話の糸口を開いていくことが必要です。
一方のNPO側においても、対話を変革へとつなげていく上で、踏まえておきたいポイントがあります。一つはエンゲージメントの目的やゴールを明確にすること。アニマルライツセンターは、前向きな話し合いが行われている場合キャンペーンを原則行わないという方針の下、トリドールホールディングスへのキャンペーンでは初回の対話日時の決定を持って、日本でのキャンペーンを閉鎖しました。
また建設的な対話をするためのポリシーを持って実践し、相手の誠意に応えることも大切です。脱炭素の領域ですが、グリーンピース・ジャパンはトヨタ自動車へのキャンペーンの過程で実現した対話について、日時や詳細は非公開とする事前合意を尊重して報告を行なっています。また別の事例ですが、時間をかけて丁寧にアンケートに答えたにもかかわらず、その結果がどうなったのか何も連絡がないという企業からの声も耳にしたことがあります。
長期的に目指す姿を踏まえた上で、そのための第一歩を提示し、徐々に要求を高めていく段階的なアプローチも大切です。最初から100点を求めていないことを明確に伝えた上で、例えばケージフリー卵であれば長期的な目標設定と、現在の調達割合を開示するところが第一歩となることを伝えて行動を促すといった形です。
また間に第三者が入ることで対話が促進されるケースもあります。私たちエコネットワークスとしても、企業とNPOとの対話の架け橋の役割を担うべく、引き続き機会を模索していきます。
アニマルウェルフェアは、決して動物の権利・福祉の話だけではありません。生物多様性や人間の健康・衛生の問題とも密接に関連しています。劣悪な環境に置かれた飼育動物を飼育する従業員の環境もまた劣悪な可能性があり、また従業員を動物虐待に加担させてしまうことは、いずれも人権にも関わる問題です。そんな観点も踏まえ、人権をテーマにしたおしゃべり会で本テーマを取り上げます。
【告知】2/16 人権おしゃべり会「動物の権利にどう向き合う? 企業とアニマルウェルフェア」
(Thumbnail photo by Curious_Collectibles via Pixabay)