サステナビリティ人材、社内でどう育成?

2025 / 12 / 1 | カテゴリ: | 執筆者:宮原 桃子 Momoko Miyahara

(Photo by wavebreak3 via AdobeStock)

11月に発表された「LinkedIn Green Skills Report 2025」によると、世界のサステナビリティ人材に対する需要はこの1年で7.7%増加したのに対し、供給の伸び率は4.3%にとどまり、人材が依然として不足しています。実際、サステナビリティ関連の求人情報を見ない日はなく、経験豊富な人材にはあちこちから声がかかるなど、パイの奪い合いの状態にあるように思います。新しい人材の採用にも限界があり、サステナビリティの取り組みを持続させるためには、社内で長期的に育成していく必要があります。

「知識✖変革意識」「組織横断」で、効果的な育成を

社内での人材育成に向けては、「社内公募制度」「社内インターン制度」などを通じてサステナビリティ推進に意欲のある人材を発掘・育成しながら、サステナビリティに関する研修を全従業員対象の必須プログラムに組み込むといった動きが広がっています(参考:経済産業省「GX関連企業における人材確保に関する取組事例集」/2025年3月発行)。

サステナビリティ関連の社内研修では、「知識」と「変革への意識啓発」をセットで進めることがカギの一つです。例えば、気候変動や資源循環などの主要な分野について、国内外の動向や法規制、自社・他社の取り組みなどの情報・知識を得るだけでなく、各職務で取り組むことが自社や社会にどのようなインパクトを与えるのかを自分ごとに落とし込んで考えるワークショップを組み合わせることが、具体的な変革を生む人材の育成に向けて効果的といえます。

また、サステナビリティ領域は、気候変動や生物多様性、資源循環など多岐にわたるテーマが相互に深く関わり、サプライチェーン全体での取り組みが必須であることから、組織内の様々な部門、サプライヤー、さらには競合他社も含めた業界横断的な連携も必要になります。この観点から、サステナビリティ人材の育成においては、企業内や企業間での対話を深める機会を提供することも重要です。

先行するEUなどに人材を派遣する動きも

この他、ここ数年大手企業を中心に、サステナビリティや情報開示の領域で先行するEUに人材を派遣する事例もよく見かけます。グループ傘下の現地組織において、ESRS(欧州サステナビリティ報告基準)などの情報開示基準や法規制に対応するとともに、全社のサステナビリティ推進戦略に活かし、国際的な基準・水準に対応した人材の育成につなげる狙いもあります。こうした社内ネットワークを活かした育成だけでなく、留職やプロボノ、副業など、社外での経験を通じた人材育成も考えられます。

人事評価にもサステナビリティを組み込む

(Photo by chinnarach via AdobeStock)

さらに、人材育成と連動して、評価制度にサステナビリティに関する項目を組み込んでいくことも重要です。役員報酬をESG指標と連動する企業は増えており、世界の主要企業においては約8割に上るとする調査結果がありますが、従業員レベルでもその動きは広がりつつあります。例えば、花王は従業員の個人目標を管理する「OKR(Objectives and Key Results)」という仕組みを設け、従業員は「事業貢献」「ESG」「One team & My Dream」の3つを目標に設定し、業績を評価されます。ユニ・チャームも2023年から人事評価制度にESG指標を組み込んでいます。この他、サステナビリティ分野での社内表彰制度や社内起業制度など、従業員の取り組みを後押しする仕組みも、効果的な人材育成につながっていきます。

今、各社でサステナビリティと経営の統合が進む中、サステナビリティ人材は、組織や事業の全体像を把握し、俯瞰した視点で取り組むことが求められます。これまで社内で活躍してきた人材を、サステナビリティの観点からもしっかりと育成・評価する仕組みをつくっていくことが、効果的にサステナビリティを推進するための近道の一つになりそうです。


エコネットワークス(ENW)では、組織を超えて様々なメンバーが集う学びと対話のプラットフォーム「Wave With(ウェーブ・ウィズ)」の一環として、様々なテーマに関して社内や企業間で考えるセッションを企画しています。人材育成や社内啓発のあり方などを含め、ご関心のあるテーマがありましたら、お気軽にご相談ください(詳細はこちら)。

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