児童労働撲滅に向けて:多くのステークホルダーへと広げていくために

2025 / 10 / 16 | カテゴリー: | 執筆者:EcoNetworks Editor

今年6月、2025年を目標年度としていた児童労働撤廃の達成は難しい状況であることが発表されました。世界の児童労働者数は減少傾向にあるものの、その数はいまだ約1億3,800万人に上ります。チョコレートの原料であるカカオ豆の生産地でも児童労働が長年の課題となる中、日本国内のチョコレートメーカーとして、いち早く本課題に取り組み大手企業やNGOなどと連携しながら活動を推進してきたのが、「ブラックサンダー」でおなじみの有楽製菓株式会社です。本ブログの前編では、ブランド戦略としてこの課題に取り組む同社のアプローチについてお聞きしました。

児童労働に配慮した原料調達100%を達成した同社の次の目標は、「社会全体に変化の波を広げていくこと」です。今年5月にオープンした見学施設「ブラックサンダー ワク⚡ザクファクトリー」(愛知県豊橋市)を訪ね、取り組みをより多くのステークホルダーに広げていくためのあり方について考えました。

「ブラックサンダー ワク⚡ザクファクトリー」を訪ねて

開館時間の少し前に有楽製菓の豊橋夢工場を訪れると、「ブラックサンダー ワク⚡ザクファクトリー」の前には、すでに何組かの親子が列をつくっていました。その多くは、オープンと同時に入り口付近にある「ワクザクSHOP」へと嬉しそうに足を運んでいきます。2024年9月に30周年を迎えたブラックサンダーの魅力を、もっとたくさんの人に届けたい――そんな思いから生まれたこの施設は、まさに“ワクワク”が詰まった場所であることが、その様子からもうかがえます。

見学通路へと続く道を進んでいくと、そこには巨大スクリーンに囲まれた空間があり、ブラックサンダーの視点でお菓子ができるまでを体感できるプロジェクションマッピングが来場者を迎えます。その先には、ガラス越しに見られる製造ラインのほか、パネル展示やスタンプラリーなど、子どもも大人も夢中になれる工夫が随所に凝らされています。

そんな通路の反対側、壁一面を使って紹介されていたのが、「スマイルカカオプロジェクト」です。カカオ産地における児童労働の問題と、有楽製菓が児童労働に配慮されたカカオ原料への切り替えに取り組む背景や進捗が、イラストや写真、説明文とともに丁寧に展示されていました。お菓子を食べる人だけでなく、作る人を含むみんなを笑顔にしたい――そんな同社の思いや本課題に取り組む真摯な姿勢がひしひしと伝わってきます。

壁一面を使って展示されているスマイルカカオプロジェクト

スマイルカカオプロジェクトのロゴとコンセプト

一方で、スマイルカカオプロジェクトの展示は素通りしてしまう来場者も少なくないとのこと。「児童労働問題について知ってもらいたい気持ちはありますが、まずはワクワクした気持ちで見学してもらいたい」と話す企画担当者の言葉からは、楽しい体験の中に社会課題への気づきを織り込もうと挑戦する同社の姿勢やその難しさを感じました。

児童労働撲滅に向けた取り組みを社会に広げていくために

有楽製菓が目指す「日本一ワクワクする菓子屋」と、そうした楽しさとは正反対の「児童労働」の問題。この相矛盾する内容をどのように伝え、社会に変化の波を広げていけるか。難題ですが、これができればきっと無関心の壁を乗り越えることができるはずです。

一連の取材を通じて、同社の取り組みを起点により多くのステークホルダーに活動を広げられる様々な可能性を感じました。それぞれの立場からできることとして、例えば以下のようなことが考えられるのではないでしょうか。

  • 有楽製菓
    次なる一歩として、児童労働に配慮した原料調達100%を達成したことが、どのようなインパクトにつながっているかを可視化できると、ステークホルダーの評価や他社のモチベーションにつながるはずです。自社農園からの調達ではないため定量的に示す難しさはありますが、例えば概算での児童労働監視改善システム(CLMRS)の導入農家数や是正支援の数、また実際に支援が行われた調達農家や児童のストーリーといった定性的な成果などがあると、共感の輪がより広がるように感じます。

ブラックサンダーとのコラボレーション先
様々な企業がブラックサンダーと協業しています。例えば、コラボキャンペーンを通じてスマイルカカオの取り組みを紹介する、キャンペーン商品の売上の一部を寄付する、といったことが考えられないでしょうか。それにより有楽製菓だけではリーチできない顧客層に児童労働の問題について知ってもらうことができるはずです。協業先の企業が、一緒に取り組むことによる社会へのインパクトについても機会として捉え、上記のような取り組みを行うことで活動の輪が広がっていくことを期待します。

  • チョコレートのサプライチェーンに関わる企業
    有楽製菓も加盟している「開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム」が、カカオ産業における児童労働リスクを特定・予防・軽減するための具体的な行動目標「児童労働の撤廃に向けたセクター別アクション」を2022年に発表しました。まずはこれを参照し、賛同企業となることが第一歩として考えられます。

チョコレート商品を販売する中小企業
特に中小企業にとっては、独自に児童労働に配慮した原料調達に取り組むことはハードルが高いかもしれません。その場合、有楽製菓との共同調達に取り組む、有楽製菓がアドバイザーとして支援する、といったことは考えられないでしょうか。調達量が拡大すれば、できることの幅も広がっていき、新たな可能性も見えてくるはずです。

  • 学校関係者
    「ブラックサンダー ワク⚡ザクファクトリー」を訪ねて児童労働の問題を学ぶ社外学習プログラムを企画してみるのはどうでしょう。さらに調達先のガーナと日本の児童をつなぐような機会を作ることができれば、日本の子どもたちにとって社会課題を自分ごと化することにつながるだけでなく、ガーナの子どもたちの世界を広げる一助にもなるはずです。「食べる人だけでなく、作る人を含むみんなを笑顔にしたい」というスマイルカカオプロジェクトのロゴに込めたコンセプトを具現化する場にもなるのではないでしょうか。

有楽製菓が、児童労働撲滅のキープレイヤーとなる。それ自体がきっと、「日本一ワクワクする菓子屋」の体現でもあるはずです。同社の次なるチャレンジを、いちファンとして楽しみにしています。

取材・文:野澤健・岩村千明


エコネットワークス(ENW)では、組織を超えて様々なメンバーが集う学びと対話のプラットフォーム「Wave With(ウェーブ・ウィズ)」で、あらゆる組織や個人の皆さまと「共にサステナブルな波を広げる」ことを目指し、多様なプログラムを展開しています。その一環として、児童労働をテーマとする会も企画中ですので、ご関心のある方はこちらよりお問い合わせください。

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