【開示研究100選】どう伝える? サステナビリティ戦略の進捗報告

(Photo by Mohamed_hassan via Pixabay)

ESGや非財務に関わる領域について、総合的なサステナビリティ戦略を打ち出す企業も増えてきました。重点領域、具体的な年次目標を定めたターゲット、進捗を測るKPIなどを設定し、浸透しやすいよう名称にも工夫を凝らす例も見られます。

今回はサステナビリティ戦略の開示に焦点を当て、開示全体の中での戦略の位置付けや開示における工夫を見ていきます。


Kering(フランス、ラグジュアリー)

  • ・2017年に発表したサステナビリティ戦略において、3つの重点領域を定め、2025年までのターゲットを設定。開示においては、3年ごとに進捗を公表することを宣言
  • ・直近3年分については、Sustainability Progress Report 2020-2023を作成。各領域の概要や進捗、具体的な事例をデザイン要素を入れた33ページのレポートとして開示
  • ・毎年の報告は、法定開示書類である年次報告書Universal Registration Documentにおいて開示。サステナビリティパートはESRS(欧州サステナビリティ報告基準)の項目に則って報告
  • ・サステナビリティ関連のその他の開示書類(方針、戦略、データベース)は別紙Kering Sustainability Libraryで一覧化。ドキュメントの概要、対象範囲、最終更新日、リンク先をまとめる
  • ・データ関連はESG Databookとしてエクセル形式にまとめ、各種対照表も掲載

Pepsico(米国、食品)

  • ・サステナビリティを中心においた長期的な変革のための戦略PepsiCo Positive (pep+)を2021年に発表。3つの重点領域を設定し、2030年までの複数のターゲットを定める
  • ・サステナビリティ戦略に関する最もコンパクトな開示書類は、ターゲットに対する進捗が表形式で一覧にまとまっているESG Performance Metrics(13ページ)
  • ・またウェブサイトでは、進捗について表形式だけでなくインタラクティブなグラフとして開示している(直近の目標の見直しにあわせて掲載内容を精査中)
  • ・戦略全体の開示は、2023 ESG Summary(67ページ、上記ESG Performance Metricsを含む)を通じて実施。概要と具体的な取り組み、実績をデザイン要素を入れたPDFに。2023 ESG Summary Overview(15ページ)も作成
  • ・ウェブサイトのESG Topics A-Zがサステナビリティ全体の詳細開示の位置付け。40以上のイシュー別に、アプローチ、取り組みの進捗、今後について、最終更新日、あるものは関連書類を開示

花王(日本、日用品)

  • ・2019年にESG戦略Kirei Lifestyle Planを公表。3つの柱ごとに2030年のコミットメントを定め、12のアクションを設定
  • ・戦略の進捗状況は毎年のサステナビリティレポートを通じて開示
  • ・最新の花王サステナビリティレポート2025(全295ページ)は前半が戦略全体、後半が3つの柱のアクションごとに、ISSB/SSBJのフレームワークを土台に構成。戦略の次に指標と目標をおく、リスク・機会から事業と環境・社会へのインパクトまでを一覧にしたチャートですべてのアクションの全体像を示すなど、分かりやすさを追求
  • ・事業と環境・社会へのインパクトをもたらした重要な取り組みを抜粋したエグゼクティブ・サマリー(9ページ)をレポート内に設け、ダイジェスト版としても展開可能に

サステナビリティ戦略の全体像と進捗の分かりやすい開示と、ESGの各側面に対する詳細な開示要請への対応は、開示戦略を構築する上での2つの中心軸となります。自社のサステナビリティ戦略の特徴を踏まえた上で開示のあり方を検討し、中期的な視点を持って数年単位で開示のレベルを引き上げていくことが求められます。

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