「グリーンウォッシュ」規制 日本の先行きは?(後編)

2025 / 8 / 1 | カテゴリー: | 執筆者:宮原 桃子 Momoko Miyahara

近年、多くの企業が、環境保全に関する取り組みや商品・サービスについて発信を行っています。これらは「環境主張」*と呼ばれ、その際に注意しなければならないのが「グリーンウォッシュ」です。実態が伴わないにも関わらず、環境に配慮しているように見せかける表現や手法を指し、表示規制の対象となります。

グリーンウォッシュ規制において後れを取る日本は、今後どのようなことが求められていくでしょうか。欧州や日本の法規制の現状をお伝えした前編に続き、後編ではこの分野で精力的に活動するNPO「気候ネットワーク」代表であり、弁護士の浅岡美恵さんにお話を伺います。

* 組織が環境に配慮していることを自ら宣言すること

日本も法規制や仕組みの強化が必須 ~気候ネットワーク代表・浅岡弁護士

― 環境表示規制について、国内外の動きをどう見ていますか?

浅岡さん:
まず環境表示が「正しく表示されているか」を考える上で、2つの観点があります。一つは、企業の環境への取り組みが「実質的な取り組みか」という点です。気候変動分野においては、カーボンオフセットなどではなく、パリ協定の1.5℃目標に資する「自社による実質的なCO₂排出量削減の取り組み」が、グローバルで厳しく求められる流れがあります。もう一つは、消費者に誤認・不利益を与えないといった消費者保護の観点です。

EUでは、これら2つの観点がしっかり統合されており、公正な競争が進められる環境が整えられています。他方で日本は、環境目標や取り組みが緩い企業がまだ多い上に、消費者保護の観点では環境表示を規制する法律が不十分です。景品表示法(以下、景表法)には、環境や気候変動に関する目的・要素が明確に示されているとは言えません。また、不正競争防止法にも、これらの要素を加えていくべきです。

― 日本は法規制が不十分ということが影響しているのか、グローバルで増えている環境NGOによる訴訟事例は見かけませんね。

浅岡さん:
法規制が限定的という問題もありますが、これに加え、日本ではNGOが訴訟を起こせる要件が厳しいという背景があります。日本では、グリーンウォッシュに当たると考えられる広告に対して、景表法違反の訴訟を起こすことができるのは、消費者庁に認定された「適格消費者団体」だけです(消費者団体訴訟制度)。その他のNGOや個人には、提訴権は与えられていないのです。気候ネットワークも、JERAの「CO₂が出ない火」という広告に対して、訴訟ではなく日本広告審査機構(JARO)への申し立てという方法を取りました。今後、消費者団体が問題意識を広げて取り組むことが期待されます。また、日本では、情報公開法以外には環境NGOに訴訟を提起する権利が認められていません(詳細はこちら)。海外では広く認められており、改善が急がれています。

― 日本のグリーンウォッシュ対策の変革に向けて、今後何がカギとなるでしょう?

浅岡さん:
国の動きが遅いという課題がある中で、消費者や企業からの働きかけは一つのカギになると思います。一般消費者や社会全体が「これはおかしい」と声を上げていけば、それが変化の後押しとなり、最終的には判断基準の一つになっていきます。気候ネットワークでは、消費者がグリーンウォッシュ広告を通報できる「グリーンウォッシュ意見箱」という取り組みも行っており、集まった意見はJAROに申し立てていきたいと考えています。

企業側からの動きも重要です。多くの企業がグローバル展開する中、グリーンウォッシュを含むあらゆる領域でグローバルスタンダードに沿って行くことが求められています。企業が国よりも先行して、環境表示やグリーンウォッシュ対策について取り組み、それを発信することは変化につながると思います。


エコネットワークス(ENW)でご支援している企業さまにおいても、グリーンウォッシュ対策に向けた社内啓発や社内ガイドラインの策定などの取り組みが始まっています。日本でも徐々に規制強化に向けた動きが進む中、企業は先行してグリーンウォッシュ対策に取り組むことで、法的リスクの低減とともに、ステークホルダーからの信頼獲得、ひいては企業価値の向上につなげていくことができるように思います。

宮原桃子  コンテンツプロジェクトマネージャー/ライター)

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