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実は誤用? 効果がない? アンコンシャス・バイアス研修
日本では「アンコンシャス・バイアス」の使われ方が誤用されている、というジェンダー・ハラスメント研究者の小林敦子さんの記事を読みました。国際的、学術的な概念と、日本社会において広がっている概念との間にずれがあると。
アンコンシャス・バイアスの捉え方
アンコンシャス・バイアスは、本来その言葉(アン=ない、コンシャス=意識している)のとおり、意識上にないもの、意識すらできていないことを指します。しかし、日本では一般的に、偏見と気づかず悪気がなく思っているような、意識上にあることまでも、この言葉が意味する範囲に含めてしまっているといいます。
仮に誤用だとしても、その問題点が最初すっと理解できませんでした。現時点の私なりの整理としては、以下のとおりです。
・「無意識の」という側面が強調されることで、悪意や差別意識の有無が焦点となってしまう。本来はそうした意識があったかどうかではなく、差別や偏見につながってしまう考え方それ自体を見直していくことが重要
・気づいていないものに気づこう、と個人の意識や努力に問題を矮小化してしまう。バイアスは社会環境や文化、制度によって形成されるものであり、そうしたバイアスを生み出す制度や仕組みを変えていくことが本来すべきこと
色々と調べる中で、アンコンシャス・バイアス研修は効果的ではない、というレポートに行き当たりました。
行動変容につながっていないアンコンシャス・バイアス研修
2020年に発表されたレポートで、当時英国政府下にあり現在は独立した組織となっているBehavioural Insights Teamがまとめたものです。いくつかのポイントを以下に紹介します。
- ・アンコンシャス・バイアス研修は、一時的に個人の意識啓発につながる場合もあるが、行動変容や職場における不平等の解消につながるという確たる根拠はない
- ・長年かけて培われたバイアスが、特に一回限りの一方通行の研修において解消されることはない
- ・研修のやり方によっては、逆効果になる場合も。反発につながりステレオタイプが強化される、研修を済ませたことで良しとされ不平等解消につながるかどうかといった観点での検証が疎かなまま意思決定が行われたりするなど
- ・どのようなトレーニングが有効かという科学的なデータが不足している中で、アンコンシャス・バイアス研修の実施を目的化せず、採用や昇進比率を高めるといった行動変容の効果が確認されている施策を優先すべき
その後の科学的な知見の蓄積について確認しきれていませんが、少なくとも実体験を鑑みて、上記の点は納得のいくものです。ともすると、こうした言い方はNGという言葉遣いや、「とは言ってもねー」という自身のこれまでの考えと折り合いをつけることに終始してしまい、本質的な課題解決に目が向かない可能性は十分あるといえます。
研修の効果を高めるアイデアの一つとして、職場の25%の意志ある人たちが参加すれば研修の効果は継続する、という研究結果から、強制ではなく有志の参加とする方法も紹介されています。ハラスメント対策においても、行為者への研修だけでは限界があり、周りが早い段階で声を上げやすい風土づくりが重要であるという点とも重なります。
アンコンシャス・バイアス研修を実施したことで良しとせず、D&Iの推進や不平等の解消へとつながっているか、研修を含めた施策のあり方を定期的に見直し、継続して取り組んでいくことが必要です。
【お知らせ:7/18(金)人権おしゃべり会「アンコンシャスバイアス編」】
お茶会のように人権テーマをおしゃべりする「SCHR会(ス茶会)×ENW」で本テーマを取り上げます。ご参加お待ちしています。
(Thumbnail photo by Markus Spiske from Unsplash)
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