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反DEIにどう対応? 問われる企業の姿勢

(Photo by Clay Banks via Unsplash)
今年に入ってから、米国企業を中心にDEI(Diversity, Equity&Inclusion)の目標やプログラムを縮小・廃止する動きが相次いでいます。その背景には、保守的な政治家や団体によるDEI施策に対する反発や積極的差別是正措置(アファーマティブ・アクション)に対する違憲判決などがあり、トランプ大統領の再任がこうした動きを加速させています。企業はDEIをめぐる外部環境の変化に、どう向き合い、対応していくべきなのでしょうか。
米国で起きている「DEI揺り戻し」
今年1月、米国のトランプ大統領は連邦政府のDEIに関する政策やプログラムなどを廃止する大統領令に署名しました。反DEIを唱える人々は、この取り組みを「人種や性別など特定のグループを優遇する逆差別」だと主張。その背景には、白人男性層を中心に「割を食う」可能性がある現状への反発や不満が見え隠れします。
保守派が米企業に対してDEI推進策の撤回を迫る訴訟や株主提案を行う中、アップルは株主総会でDEIの取り組みの廃止を求めた株主提案を否決し、多様性重視の姿勢を強調しました。
一方、グーグルは2020年に設定した「歴史的に過小評価されてきたグループからの採用を5年以内に30%増やす」という目標を廃止し、一部のプログラムを見直す方針を明らかにしました。
ゴールドマン・サックスは、副社長職に占める女性比率や黒人・ヒスパニック系専門職の割合に関する目標を年次業績報告書から削除。さらに、同社は新規株式公開(IPO)業務を引き受ける企業に対して求めていたDEIに関する方針※も撤廃するなど、近年取引先にも広がりを見せていたDEI推進の動きに揺り戻しが生じています。
2月中旬にDEIの目標廃止を発表した米銀シティグループの従業員は、Bloombergの記事で「これほど迅速に廃止されるということは、そもそも深く浸透していたわけでも、十分に理解されていたわけでもないことを示唆している」と語っています。
※IPO業務を引き受ける欧米の法人顧客は、取締役会で少なくとも2人が白人男性以外の人材で、そのうち1人は女性でなくてはならないという方針を掲げていた
DEI推進の意義とは?
本来DEIは、従来社会から取り残されてきた人々を含むあらゆる人たちの多様性を尊重し(Diversity)、公平性を確保して(Equity)、包摂すること(Inclusion)を目的としています。
「Equality(平等)」は全員に同じ条件を与える考え方である一方、DEIの概念に含まれる「Equity(公正性)」は個々の背景やニーズに応じた支援を行い、誰もが同じ機会を得られるようにする考え方です。現代社会では、その構造の歪みによって人種、性別などによる格差が生じており、単に機会を平等に提供したとしても、不平等や不公平が解消されることにはならないのです。
こうした社会の構造は、結果として特定層をさらに不利な立場へと追いやってしまうこもあります。例えば、先日のフジテレビをめぐる一連の騒動や対応では、女性に対する人権意識の欠如が浮き彫りになりました。その要因の一つとして、意思決定層が男性中心に構成されていることが指摘されており、これは社会全体にも通ずる話です。
このような構造的な課題を解決し、人権侵害の防止や軽減、格差の是正を進めるためには、DEIの取り組みが不可欠だといえます。
DEIの本質を軸に据えた戦略や施策を
私自身、実際に企業のDEI戦略や関連コンテンツの制作支援を行っている中で、ときにそのメッセージが定型化されていたり、DEIの社会的な意義に対する視点が欠けてしまっていたりすることが気になっていました。
DEIの動きが過渡期にある今こそ、企業は一度立ち止まり、形骸化している目標や取り組みがないか再評価する必要があるのかもしれません。DEIの本質をしっかり軸に据えて自社の戦略や施策を追求していけば、自ずと外部環境の変化に左右されない強固な方針や取り組みにつながっていくのではないでしょうか。エコネットワークスも、企業のこうした取り組みを支援する際はご担当者と対話を重ね、あるべき姿を共に考えるアプローチを心がけていきたいと思います。
(岩村千明 コンテンツプロジェクトマネージャー/ライター)
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