カツオにまつわるサステナビリティ課題とは?

2024 / 11 / 11 | カテゴリー: | 執筆者:Shiho Funahara

(Photo by Anestiev via Pixabay)

秋に旬を迎える戻りガツオ。脂ののったその美味しさを楽しんでいる方も多いかと思いますが、実はサステナビリティの観点から見ると、カツオの漁獲には様々な問題があります。

 漁獲量の急激な増加、生態系の問題

WWF(世界自然保護基金)が一般的に馴染みのある魚についてサステナビリティの観点から評価を実施した「シーフードガイド」によると、カツオの資源量は、すべての海域で中~高位であるものの、近年の漁獲量の急激な増加により黄色信号となっています。

日本ではお刺身やカツオ節などに使用されることが一般的ですが、海外ではツナ缶材料として使用されることも多く、特に低中所得国を中心に安価なタンパク源として重宝されており、昨今漁獲量が急激に増えています。

加えて、カツオの漁獲で多くの場合使用される巻き網漁法をめぐっては、絶滅危惧種のサメ・マンタ類を混獲してしまうことから、生態系保全の観点においても問題となっています。

漁獲における人権リスク

日本のカツオ・マグロの供給量については、半数以上が国内で漁獲されているものの、その他は台湾、インドネシア、中国などから輸入されています。しかし、米国労働省が公表している「児童労働や強制労働の利用が疑われる物品のリスト」によると、これらの国で獲られた魚は強制労働が疑われる物品として指定されており、少なからず人権におけるリスクが存在します。また、人権や環境の保護に取り組むNGO団体EJFの調査などでは、特に遠洋漁業は人の目が届きづらい洋上で行われるという特性上、長時間労働や、劣悪な環境下での労働、不当な賃金など様々な人権問題が温床しやすいと指摘されています。

サステナビリティ課題に対する企業の取り組み

上記のようなサステナビリティ課題の解決に向け、以下の企業では様々な取り組みが行われています。

  • 伊藤忠商事
  • 水産物への取り組みとして、カツオ・マグロ類調達方針を策定し、強制労働の禁止や、健全な労働条件・労働環境の確保などを定めています。また、2025年度までに資源の持続性と環境に配慮した天然魚の「MSC認証」取扱数量15,000t/年を目標として掲げているほか、パートナーとして運営しているインドネシアの合併工場では、一本釣漁法による原料の調達を行っています。

※一度に大量に漁獲することなく、混獲を避けることができる持続可能な漁法

  • イオン
  • 「MSC認証」や責任ある養殖により生産された水産物の「ASC認証」商品の販売に取り組んでいます。その他、水産物の持続可能な利用のために定期的なリスク評価を行う「水産物アセスメント会議」や、取り組み指針や具体的な対応を検討する「水産物持続可能な利用推進委員会」を設置しています。

ESGの観点からバリューチェーン全体を捉える

今回取り上げたのは、カツオについてですが、私たちの身の回りにある食べ物や商品は、いくつものルートを経て、様々な人の手を介して私たちの手元に届きます。そして、その過程においては、環境や生態系、人権の問題など様々なサステナビリティに関する課題が複雑に絡み合っています。バリューチェーン全体をESGの観点から包含的に捉え、継続的にリスク評価などを通じウォッチしていくことが重要です。

(船原志保/アナリスト)

こちらの記事もご覧ください:

Seaganism 新しい言葉から学ぶ
Rice-fish agriculture=「稲魚農業」
by-catch=「混獲」

 

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