Sustainability Frontline サステナビリティをカタチに
高まる 猛暑による労働者の人権リスク

(Photo by Engin_Akyurt via Pixabay)
「地球沸騰化」とも言われる今日、日本だけでなく、世界各地で連日猛暑日が続いています。
猛暑と人権の関係
日本では未だ馴染みの薄い「暑さ」と「人権」ですが、危険な暑さが続く中で、企業においては特に「労働者の安全・健康に関する権利」を侵害するリスクがあり、人権の観点を踏まえた予防策や対応の必要性が高まっています。
熱中症対策が不十分だとして、従業員がストライキ
東京新聞によると、2024年8月、ヤマト運輸の倉庫で勤務している従業員が、熱中症対策が不十分だとしてストライキを行い、加入する労働組合と共に労働環境の改善やファン付き作業服の支給などを求めました。
夏場における、屋外での作業や十分に空調が効いていない屋内での作業は熱中症のリスクが高く、定期的な温度計測や小まめな休息など適切な管理および予防策が不可欠です。労働環境における不十分な対応は労働者の人権侵害につながる可能性があるとともに、命の危険を伴います。
特に猛暑の影響を受けやすいライツホルダーとは
また、同じ業務に携わる労働者でも、暑さに対する反応は人それぞれです。UNICEFやHuman Rights Watch、 米国労働安全衛生研究所(NIOSH)の研究結果によると、特に影響を受けやすいライツホルダーとして以下のグループが挙げられています。
猛暑の影響を受けやすいライツホルダー:
子ども、女性、高齢者、障害者、妊娠中の人、高血圧や肥満、特定の薬剤を使用している人など
企業に求められる対応とは
そんな中、下記の企業では、人権の観点を踏まえた猛暑への取り組みを実施しています。
- キヤノン
- 人権対応の一環として、従業員から相談窓口に寄せられた作業場の室温に関する相談に対し、調査を行い、巨大ファンや空調機の設置、換気用パイプの増設、予防用に冷やしたレモン水の提供などの対策を実施しました。また、屋内外作業場における熱中症の発症率が高まっていることから、請負労働者に対する熱中症予防教育を継続しています。
- オリエンタルランド
- 「環境・気候変動に関する人権問題」を重要人権課題の一つとして捉え、人権デューデリジェンスを実施しています。
人権の観点を踏まえた猛暑対策が必要
連日続く危険な暑さの中で、企業は労働環境における適切な予防対策・管理を講じるとともに、人権の観点から「猛暑」を捉え、取り組みを行っていくことが必要です。また、加えてどのようなライツホルダーが特に影響を受けやすいのかなども注視して対応を進めていくことが重要です。
(船原志保/アナリスト)
こちらの記事もご覧ください:
・人権擁護のため、政府は気候変動対策を行うべき 欧州での画期的な判決
・気候スパイラル 深刻な気候変動データで振り返る2023年
・気候変動と人権 企業の責任は?