「1個買うと1個無料」はサステナブルか? 求められる多角的な視点

ペットボトル

(Photo by monticellllo via AdobeStock)

先日韓国を訪れたとき、コンビニでよく目にしたのがお菓子やジュースを対象にした「1個買うと1個無料」キャンペーン。レジで「対象商品なので、もう1個取ってきてください」と度々言われるほど、非常に多くの商品で展開されていました。しかし、そこにはサステナビリティに関わる問題が見え隠れします。

韓国での実体験から見えた、食品ロスや健康・労働問題

「1個買うと1個無料」キャンペーンは、日本も含め世界中で見られる販売手法です。英語圏では「Buy One Get One Free(以下、BOGOF)」と称されます。消費者にとっては経済的にお得なキャンペーンであり、企業にとっては半額にするよりも収益が見込まれる手法で、一見問題はないように見えます。

ただ、冒頭の韓国でまず感じたのは食品ロスの危険性でした。筆者の子どもはジュースを1本買うつもりが、キャンペーンだと聞いて2本入手。しかし、翌日まで飲み切れず最後は一部廃棄する結果になりました。また、本来は1本飲めば満足だったにも関わらず、お得だからと糖分の高い飲料を余計に摂取することになり、こうしたキャンペーンが加速すれば健康への影響も懸念されます。

さらに現地の従業員に話を聞くと、最近はこの種のキャンペーンが過剰に増え、2週間ごとにBOGOF対象商品が次から次へと変わる状況とのこと。店員は商品管理やレジなどでの対応に疲弊しているそうで、働き方の観点から「ほどほどにしてほしい」とため息をついていました。

欧州における規制の動き 物価高の中で賛否両論

スーパーでの買い物風景

(Photo by Kwangmoozaa via AdobeStock)

BOGOFキャンペーンについては、食品廃棄を加速させていると2014年の欧州委員会レポートで報告され、すでに10年以上にわたり課題が指摘されてきました。また、英国では健康への悪影響を防ぐ目的から、高脂肪・高塩分・高糖分(HFSS)の食品・飲料に関して、BOGOFや「3 for 2」(3個購入した場合1個無料)など複数購入での割引販売を禁止する規制を2021年に決定しています。フランスでは安売り競争に歯止めをかける目的から、食品の値引き水準を価格ベースで34%、量ベースで25%以下にするよう規制しており、必然的にBOGOFは認められていません。

ただ、BOGOFへの規制にも賛否両論が生まれています。前述の英国の規制は、当初2022年10月から導入される予定でしたが、2025年10月までの延期が決定されています。英国政府はその理由について、近年の原料高によって生活費が高騰する中で、消費者が複数購入による割引特典を選ぶ権利もあり、健康への悪影響防止という目的とのバランスを考える必要があるとしています。

サステナビリティは必須 企業に求められる多角的な視点

BOGOFは、最近日本でもよく目にするようになりました。生活費の高騰から消費者がそこに惹きつけられ、企業もまたそうした要素を販売戦略に組み込むのは、当然の流れかもしれません。しかし、長期的に見れば、どの企業もサステナビリティと経営の統合なくして生き残ることはできず、販売戦略においても食品廃棄や健康・人権などに関わる負の影響に向き合わなければなりません。物価高をはじめ目の前に事業上・経営上の難題がある中だからこそ、サステナビリティを含めた多角的な視点をしっかりと持つことが、改めて企業には求められています。

宮原桃子 コンテンツプロジェクトマネージャー/ライター)

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