Sustainability Frontline サステナビリティをカタチに
「ペットも大切な家族」、進む企業の福利厚生制度

(Photo by sohag_hawlader via Pixabay)
ペット×サステナビリティ。一見あまり関係のないように思えるトピックですが、誰もが働きやすい環境づくりを考える上で、大切な視点となりつつあります。
進むペットの家族化
日本におけるペットの飼育数は2023年の「一般社団法人ペットフード協会」の調査によると、犬684万4,000頭、猫906万9,000頭に上り、この数値は子どもの出生数を上回るとも言われています。ペットの飼育数についてはここ数年、横ばいで推移しているものの、子どものいない世帯、一人っ子世帯、単身世帯、シニア世帯などの少人数世帯の増加に伴い、ペットを大切な家族の一員として考える「ペットの家族化」がより一層強まっています。
同時に、「ペット葬儀サービス」「ペット保険」「ペットシッター」など、人間同様の手厚いサービスが受けられる多種多様なペットサービスも増えています。また、ペットを大切な家族として考える傾向は企業の福利厚生制度においても広がりつつあります。
企業の取り組み事例
- ユニ・チャーム
- ペットケア関連商品を展開しているユニ・チャームでは、多様な働き方を支える制度の一つとして、ペットを飼育している社員向けに、ペットとのお別れのための休暇(自宅で飼育していたペット[犬・猫]が死亡した際、特別休暇1日を取得できる制度)を導入しています。
- ZOZOTOWN
- ZOZOTOWNでは、家族時短制度を導入しています。業務とプライベートをバランスよく充実させるため、育児や介護はもちろん、ペットや同居人など社員が「家族」と認識する人や動物のサポートが必要な場合は、1日最大2時間の時短利用が可能です。時短は30分単位から利用することができます。
- エウレカ
- 恋活・婚活マッチングアプリサービスを展開するエウレカでは、ペットも大切な家族という考え方のもと、「病院に連れていく際に利用できる半休を年3回取得可能」「ペットが死亡した際の休暇2日」「やむを得ない理由がある場合、ペット連れ出勤可」という3つの制度が導入されています。また、社内には、オフィス犬でCDO(Chief Dog Officer)のジョブがいます。
充実した福利厚生制度が生み出すメリット
エウレカのようにオフィスで動物を飼うという企業も増えつつあります。いくつかの学術研究において、動物との触れ合いはストレスの緩和やリラックス効果、社員同士のコミュニケーションの増加など様々な効果につながるという結果が報告されています。
これらの制度や仕組みを補強していくことは、社員にとって、より働きやすい職場やウェルビーングの向上につながるだけでなく、社員同士のコミュニケーションの円滑化にもつながるため、仕事面においても良い相乗効果が期待され、企業にとってもメリットとなりえます。一方で、制度の導入や整備にあたっては、動物が苦手な人、アレルギーのある人々への配慮も忘れてはなりません。ペットを飼っている人・飼っていない人、動物が好きな人・苦手な人、両者の視点からきちんと考慮した上で、対応を進めていくことが重要です。
(船原志保/アナリスト)
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