「教育する対象」から「共創パートナー」へ 次世代と共に社会を変える

2024 / 2 / 29 | カテゴリー: | 執筆者:宮原 桃子 Momoko Miyahara
若者が集って協力する様子

(Illustration by Sonulkaster via AdobeStock)

サステナビリティの領域では、環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんなど次世代の活躍をよく目にします。しかし一方で、先日中学生の娘から聞いた話に考えさせられることがありました。授業で「10年後の未来についてどう思うか」という質問が投げかけられ、「明るい」「やや明るい」「やや不安」「不安」という選択肢のうち、「不安」に手を挙げた生徒がクラスの3分の2に上ったそうです。確かに、気候危機をはじめ社会課題が山積する今、子どもたちが不安を感じるのは当然と言えます。しかし、そこに「社会や未来は変えられる」という意識や希望が薄いことが、未来を信じられないという不安をさらに増大させているように感じるのです。

カギは「社会を変える」原体験

この傾向は、日本財団の第20回「18歳意識調査」にも裏付けられています。「自分で国や社会を変えられると思う」人は日本では18.3%にとどまり、国の将来像に関しても「良くなる」という答えはわずか9.6%と、いずれも調査対象9ヵ国のうち最下位でした。一人ひとりが「社会を変えられる」という意識を持つことは、あらゆる社会変革や課題解決の基盤になります。2025年にはミレニアル世代やZ世代などが日本の労働人口の50%を占めるようになる中、次世代の意識の変革は、教育機関や自治体、企業など様々なレベルで取り組むべき喫緊の課題です。

今の子どもたちは、学校でSDGsを学び、また多くの企業や団体もSDGsや取り組み事例を伝えるプログラムを展開する中、社会課題に対する情報や知識をすでに多く得ています。課題に関する情報疲れにもなりかねない中で、カギとなるのは「社会を変える」原体験ではないでしょうか。

次世代を「共創パートナー」として捉える企業の動き

若者が会議する様子

(Photo by BGStock72 via AdobeStock)

18歳以下のCFO(Chief Future Officer/最高未来責任者)を2019年から設置するなど先進的な取り組みをしてきたユーグレナが、2月に「提言型のCFOから、共創型の未来世代アドバイザリーボードの設置へ」という方針を発表しました。CFOが会社に提言を行うステージから、「未来世代アドバイザリーボード」を設置して取締役会と対話しながら取り組みを推進するという、経営にさらに深く組み込んだステージに移行するそうです。近年では、様々な企業において若い世代が経営参画する「シャドーボード」が設置され、DE&Iやイノベーション、社会課題解決につなげようという動きも広がっています。

この他、例えば丸井グループでは、将来世代と共にビジネスアイデアの事業化を目指す「Future Accelerator Gateway」や、中学生が社会課題解決アイデアに取り組む「マルイ・ミライ・スクール」を開催するなど、若年層を地続きで巻き込む取り組みを進めています。企業以外でも、実際の選挙と同時進行で子どもが投票を行う「子ども選挙」や、大人と子どもが対等な立場で共に未来をつくるコンセプトを掲げる「みらいをつくる超・文化祭」など、次世代を共創パートナーと捉えて共に社会課題に取り組む試みが広がりを見せています。

子どもは大人と同様に、社会を構成する権利主体であり、変革の担い手です。従来のように子どもたちを「教育する対象」と位置づけて、知識や事例を伝えて終わるのではなく、「共創パートナー」として共に社会課題の解決に挑むような「社会を変える」原体験を提供することが求められています。こうした取り組みは、社会をより良いものに変えていきたいという次世代の心に火を灯し、それ自体が企業にとっても重要な社会課題解決への貢献になると言えます。

宮原桃子 コンテンツプロジェクトマネージャー/ライター)

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