Sustainability Frontline サステナビリティをカタチに
サステナブル消費を価値のある消費へ 大切なのは「共感」

(Photo by RikaC via pixaday)
昨今、増加傾向にある「サステナブル製品」。消費者の関心も年々高まりつつあり、消費者庁の調査によると、学校教育や報道でも取り上げられる機会が多くなっていることから、特に若者層の関心が高いことが示されています。
サステナブル消費における課題とは
一方で、興味はあるが実際にサステナブルな製品を購入していない理由として、「環境問題や社会課題に取り組む製品やサービスが身近にない」、「環境や社会に貢献している実感がない」、「応援したくなるような魅力ある製品・サービスがない」などが挙げられています。
規制などの整備の強化とともに消費者の「共感」が重要
「製品やサービスが身近にない」といった観点においては、共通の要件のもと、消費者に必要情報が提供されることが必要です。例えば、欧州では2023年12月に欧州委員会がEU全域のほぼすべての製品(食品、飼料、医薬品、生物を除く)に持続可能性に関する要件を定め、消費者への情報提供を改善するための新たな「エコデザイン規制案」を発表しました。各製品には「製品パスポート」と呼ばれるデジタル上での必要情報の開示が求められ、消費者はウェブポータルサイトで検索や比較検討ができます。
加えて、「環境や社会に貢献している実感がない」「応援したくなるような魅力ある製品・サービスがない」という観点については、消費者の「共感」が重要です。日常生活において、サステナブルであることを示す製品ラベルや、サステナブルを謳うテレビCMなどを目にする機会は、以前より増えています。一方で、「サステナブル」というイメージだけが先行し、製品やサービスがどのように環境や社会の貢献へつながるのか、企業として本当に伝えたいメッセージや本気度などはなかなか伝わってこないように感じます。
「共感」につなげるための情報開示を
サステナブル消費の推進には、応援消費(製品やサービスを単に消費するだけでなく、製品や企業、あるいはそれらが推進する社会的価値を支持し、購入すること)が重要であり、消費者の「共感」を得る情報開示が不可欠です。(参考文献:『Z世代にも多い消費傾向 応援消費』)
昨今、サステナビリティに関する情報開示が進む中で、多くの企業がサステナビリティ報告者や統合報告書などで、企業の考え方、取り組み、そして取り組みや商品・サービスがどのような社会や環境問題の解決につながるのかという一連のストーリーを踏まえた開示を行っています。しかし、実際、これらの媒体を主に読むのは投資家や専門家であり、消費者への訴求においては、ホームページのコンテンツやSNSなど、様々な媒体を上手く活用し、より目に触れやすい形で分かりやすく伝えるための工夫が必要です。
自社の取り組みを伝える消費者向けコンテンツ
例えば、JALでは自社の製品・サービスや取り組み、サステナビリティ課題について子どもにも分かりやすい情報開示の仕方をしています。“♯かくれサステナビリティ” として搭乗前や搭乗中に隠れているサステナビリティや”JAL社員のじつわ“としてグループ社員のサステナブルな取り組みがイラストや動画で分かりやすく紹介されており、これらの動画は飛行機の機内などでも流されています。
自社のサステナビリティに関する考え方や取り組みを消費者に分かりやすく伝え、「共感」を生んでいくことが顧客の獲得、そして消費者にとってより価値のある消費へつながっていきます。
(船原志保/アナリスト)
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