ベゾス・アース・ファンド、都市緑化に4億ドル 緑の格差と酷暑化

2023 / 8 / 4 | カテゴリー: | 執筆者:近藤 圭子 Keiko Kondo

植物の成長を見守る人のフィギュア

酷暑が続いています。2023年7月は、世界の平均気温が観測史上最高を更新し、最も暑い1ヶ月となる見通しに。グテーレス国連事務総長が「地球沸騰の時代」と語ったことも報じられました。

そんな7月、アマゾン創業者 ジェフ・ベゾス氏による気候変動対策基金、ベゾス・アース・ファンドは、都市緑化のプロジェクト「Greening America’s Cities」を発表。都市の中でも自然が少ないコミュニティに対し、2030年までに4億ドル(約573億円)を支出するとしています。

草の根団体とともに、都市の緑化に取り組む

Greening America’s Citiesの初年度となる2023年は、5つの都市(※)で活動する30団体に対し、5,000万ドル(約72億円)の助成が行われました。同基金は今後、2030年にかけて他の都市にも助成を拡大していく計画です。※5つの都市:アルバカーキ、アトランタ、シカゴ、ロサンゼルス、ウィルミントン

背景にあるのは、“緑へのアクセス”における地域格差です。歴史的に疎外されてきたコミュニティや低所得者が多い地域は、もともと厳しい自然環境の地に追いやられていたり、緑地の整備が不十分だったりして、住民は緑の恩恵を受けられずにいます。

ベゾス・アース・ファンド副代表のローレン・サンチェス氏は、緑地の重要性が軽視されていると指摘。緑地が夏の極端な暑さを和らげ、人々のストレスを軽減すること、住民の心身の健康に貢献することをプレスリリースで述べています。

助成を受けるのは、各地で実績を持つ非営利団体です。それぞれの街で公園やコミュニティガーデンの整備など、緑化活動に取り組みます。ロサンゼルスの団体ツリー・ピープルは、街に木陰を作るため、4,250本の植樹を計画。同じくロサンゼルスのパコイマ・ビューティフルは、堤防沿いのエリアを公共スペースとして整備するとともに、コミュニティづくりや人材育成を実施します。

また、助成先団体向けに技術支援や経営サポートを行う組織や、公正な緑化施策を実現するために自治体向けの研修を行う団体に対して資金が提供されていることも、注目したいポイントです。

バイデン政権は環境正義を掲げ、「Justice40」を推進

ベゾス・アース・ファンドが特定地域の緑化に投資するのは、米政府による「Justice40」と方向性が一致しています。Justice40は、バイデン政権が2023年4月に発表した、環境正義の取り組み。気候変動対策やクリーンエネルギー推進等のうち40%を、不利な立場に立たされた地域のために使うとしています。

Justice40の一環として米政府は、緑への公正なアクセス実現のため10億ドルの補助金を設けました。樹木が少ない地域を緑化して気候変動の影響を和らげつつ、樹木の維持管理等に伴う雇用も生み出そうとしているのです。

投資の必要性が高い地域は、「Cilmate and Economical Justice Screening Tool(気候・経済正義のスクリーニングツール)」で可視化されています。これは地図形式のオンラインツールで、気候変動、エネルギー、健康、廃鉱等の汚染、住宅、交通、水と排水、労働について指標が設けられ、一定レベルの地域は色付けされて表示されるものです。加えて、先住民族のコミュニティも対象として表示されています。

世界で進む都市化 誰ひとり取り残さないために

今、世界人口の約5割が都市に住み、2030年には約6割に増えると予測されています。都市の中でも住む場所によって、環境は大きく異なります。気候変動の影響が生命に直結する今、誰ひとり取り残さないための取り組みが行われています。

 

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 ケリー・マーケンによる写真(adobestock経由)

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