Sustainability Frontline
使い捨てカップ削減に向けたスタバの本気度 矛盾しないメッセージの重要性
一昨年、ENWではカフェ業界における使い捨てカップに関する調査をご支援しました。その中で、業界首位のスターバックスの状況についても取り上げたのですが、同社ではこの間、使い捨てカップ削減に向けた重要な動きがありました。
アイスも脱・使い捨てへ
スターバックスでは、ホットのドリンクは以前からマグカップが導入されていましたが、アイスについては、プラスチックから紙カップへの切替えが2021年に発表されたものの、使い捨てであることは変わりませんでした。環境NGOグリーンピースは同社に対してリユースカップの導入を働きかけるキャンペーンを展開。そして2023年3月、全国店舗の8割で店内用のグラスを導入することが発表されました。
私もスターバックスを愛用していますが、我が家の近くの店舗でも、利用者に対して切替えのアナウンスを掲示等で周知したりお客さんに説明したりしている様子を目にするようになりました。また使い捨てカップで提供する場合でも、フタや持ち手の部分はお客さんの求めに応じて必要に応じて渡す形に切り替わっており、使い捨て削減への意識が従業員にも浸透している様子が伺えます。
矛盾したメッセージとならないために
スターバックスはそのほかにも、カップのシェアリングサービスを展開するRe&Goと提携して都内の20店舗で繰り返し使えるカップの循環型プログラムを実施しています。今後も対象店舗を拡大すべく検証を進めているとのことですが、一方で、気になることも。
同社が昨今力を入れているものに、Mobile Order & Payという注文方法があります。事前にスマホで商品を注文することで、レジに並ぶことなく受け取れるというもので、急いでいるときなどは非常にありがたい仕組みです。
ただし、この方式で注文をした場合、ドリンクが予め用意された状態となっているため、使い捨てカップで提供され、持ち込んだタンブラーに入れてもらうということはできません。使い捨てカップの削減を推し進める傍らで、使い捨てカップの利用を結果的に増やすことになるオーダー方法を積極的に推奨する形となってしまっています。矛盾したメッセージとならないよう、全方位で使い捨てカップ削減を推し進めるというより強いコミットメントが期待されるところです。
使い捨てカップから脱却していくためには、もちろん企業だけではなく、生活者の意識変化や、行政による仕組みづくりも不可欠です。お隣の韓国・ソウルでは、使い捨てカップの1千万個削減というゴールに向けて、社会全体で取り組みが進んでいます。3月には新たにタンブラー割引の拡大やリターナブルカップ返却の利便性向上につながるカップの標準モデルの制作といった施策が発表されました。
スターバックスは、日本にサードプレイスという文化を持ち込みました。今度は環境の領域でも、行政やNGOといったその他のステークホルダーとも協力しながら、リユース・リターナブルを当たり前にする文化を創造し、根付かせる存在であってほしいと願います。
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(Photo by Jas Min from Unsplash)