男性育休が男女の賃金格差解消の一手に

男女平等のプラカードを掲げている画像

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先日、金融庁は男女の賃金格差の是正に向けて、上場企業などが提出する「有価証券報告書」の中で、男女別の賃金の開示を義務づける方針を明らかにしました。国別SDGs達成度ランキング(Sustainable Development Report 2021)でも、ジェンダー平等において日本の評価が低い要因の一つとして「男女の賃金格差」が指摘されています。早急な改善が求められるこの問題に、企業はどのように取り組んでいくべきなのでしょうか。課題解決のカギの一つは、「男性の育休取得」が広がることにありそうです。

日本の男女間賃金格差はG7で最大、その理由は?

経済協力開発機構(OECD)の調査では、日本の男女間賃金格差は先進7ヵ国(G7)で最大、加盟38ヵ国中でも韓国、イスラエルに次いで3番目に大きいと報告されています。背景として、これまでは結婚・出産などを機に女性が職を離れることが多い点なども指摘されてきました。日本における女性の労働力率は、結婚・出産期に当たる年代に一旦低下し、育児が落ち着いた時期に再び上昇するM字カーブを描くのが特徴でした。ところが、近年このM字カーブは改善しつつあります。2020年の年齢階級別労働率は、男性(15~64歳)が83.8%であるのに対し、女性は25~29歳が85.9%、30~34歳が77.8%とグラフの形は先進国で見られる台形に近づいてきています。

それにもかかわらず、なぜ男女間の賃金格差は縮まっていないのでしょうか。その一因として、女性管理職の少なさが挙げられます。さらに、財務総合政策研究所の調査では、パートタイムで働く女性の多さ(男性のほぼ2倍)や男性の長時間労働が関係していると報告されています。短時間労働者を除いた男性の労働時間は、日本が世界一ともいわれています。

背景には、長く根付いてきた「男は仕事、女は家事・育児」という性別役割分担意識があります。日本の女性は男性の5.5倍もの時間を家事・育児に費やしており、これらのいわゆる「無償労働」によって女性の労働が制限され、賃金格差にも影響を及ぼしていると考えられます。

男女の経済的格差が小さいスウェーデン、家事・育児分担も夫婦平等

小さな子どもの右手を男性が、左手を女性が握り、公園のような場所を歩いている画像

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スウェーデンは、2020年時点での女性の平均月収が男性の90.2%(日本は74.3%)と、世界でも男女間の経済的格差が小さい国の一つです。男女の就業率の差も小さく、女性が男性と同じくらい働く国として知られています。

その背景には、男性が育児に積極的に取り組める社会の制度や家庭・企業・社会の意識があります。スウェーデンの育休制度では、子どもが8歳になるまで両親合わせて480日取得可能で、その内90日を母親・父親双方に割り当てています。時間単位で分割して取得できるため、仕事や家庭の状況に合わせて柔軟に利用でき、男性育休取得率は88.3%。男女ともに労働時間は短く残業がほとんどないため、平日は早く帰宅するのが一般的。家事・育児の分担も夫婦平等だといわれています。

性別にとらわれず、働き方・休み方を自由に選べる環境がカギに

男女間賃金格差の是正に向けては、根本原因ともいえる女性の家事・育児に費やす時間の長さ、男性の長時間労働を改善するため、労働環境や企業文化を変えていく必要があります。あわせて、公正で透明性の高い、客観的な賃金・評価制度も必要不可欠です。

日本では、男性の育休取得向上に向けて、2022年4月に国の制度が変更になりました。男性がもっと気軽に育休・時短制度を利用できる環境が整備されれば、働きたい女性が育児を理由にキャリアを諦めることも少なくなるでしょう。また、男性にとっても「働きすぎ文化」から脱却するきっかけになり、結果として男女間賃金格差解消の一手になるのではないかと思います。賃金格差が解消されれば、男性の「家計を支えなければならない」というプレッシャーも軽減されるはずです。社会における役割が性別によって縛られることなく、誰もがライフステージに合わせて柔軟かつ自由に働き方・休み方を選べる。今の子どもたちが大人になる頃までにはそんな社会を実現するためにも、企業を中心にこの問題に早急に取り組んでいくことが求められています。

(岩村 千明/ライター)

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