これからの労働組合の役割とは?

2022 / 3 / 21 | 執筆者:野澤 健 Takeshi Nozawa

手を重ねる

 米国で広がる労働組合結成の動き

2021年12月、米スターバックスが運営する店舗では初となる労働組合が結成されたことが話題になりました。会社側は、組合は必要ないというスタンスで反対する姿勢を貫いていますが、引き続き約60店舗の従業員が組合結成に向けて動いており、広がりを見せています。

グーグルでは2021年1月に労働組合が初めて結成され、またアップルでも同様に直営店での組合結成の動きが報道されています。さらにアマゾンでは昨年否決された配送センターでの組合結成の投票に会社側の不当な介入があったとして、再度投票が実施されることが決まっています。


同様の動きは日本でも

GAFAに代表される新興テック企業などではこれまで労働組合がない場合が多く、プラットフォームを介して仕事を請け負うギグワーカーの場合、組合を組織して交渉することもできない状態でしたが、少しずつそうした流れが変わりつつあります。

日本国内でも、外資系アパレルブランドでの組合結成といった個別の動きにとどまらず、ウーバーイーツ配達員やヤマハ英語講師などの個人事業主が参加する3つの労働組合による「フリーランスユニオン」の結成といった動きも見られます。

さらにウーバーイーツの配達員が会社側との団体交渉の権利を求めて東京都労働委員会に申し立てを行っており、その結果次第では、企業は「プラットフォーム企業であり直接の雇用関係がない」という理由で団体交渉を拒否することができなくなります。


企業と従業員の対等な関係は実現できるのか?

日本企業でもリクルートや大和ハウスのように労働組合がない大企業もあります。労働者の非正規化が進む中で、正社員を中心に結成されていた労働組合の加入率は16%台と低迷を続けており、その存在意義が揺らいでいます。労働組合結成に向けた動きを、企業経営を圧迫するものとしてネガティブに捉える向きもあります。

しかし従業員が労働組合を結成し企業と交渉する権利(結社の自由および団体交渉権)は、国際労働機関ILOが定める中核的労働基準の4つの分野の1つであり、企業が人権に取り組む上で最低限守るべきものとして、国連ビジネスと人権指導原則でも定められています。

労働組合がない企業では、従業員個々人と対等な関係を築いているため、組合はない(必要ない)ということが言われます。

もちろん、労働組合を作ればそれで問題が解決するわけではなく、硬直化した組織や一部の労働者しか視野に入っていない組織では、労働者の権利は守られません。

それでも、企業と個人では、特に規模が大きくなればなるほど、そこには絶対的な力の差が生じることは事実です。一部の専門性や独立性が高い労働者や個人事業主を除いて対等の関係性になることは難しく、そこからこぼれ落ちる人が必ず出てきてしまいます。

もし企業が労働組合を必要ないと考えるのであれば、なくてよいと従業員は本当に考えているのか、ないことで問題は生じていないのかをしっかりと説明していく必要があります。


人権デュー・ディリジェンスと従業員エンゲージメントの観点から捉える労働組合の役割

労働者の基本的な権利を守るという点はぶれずに持ち続けながらも、社会の変化にあわせて労働組合の役割に対する捉え方を変化させていくことも重要です。例えば労働組合を賃金交渉などのために戦う相手としてではなく、労働者の声を踏まえて問題を事前に予防するために協働する相手として捉えることができます。労働組合は、人権に及ぼす負の影響を把握しにいく人権デュー・ディリジェンスのプロセスを進める上で欠かせないパートナーです。

また近年、経営における人的資本が注目され、多くの企業で重視されている従業員エンゲージメントの向上にあたっても、労働組合は重要な役割を果たす可能性があります。実際に三井物産労働組合「Mitsui People Union」は、組合員のエンゲージメント向上を重視する活動方針を掲げて意欲的に組合活動に取り組んでいます

非正規雇用やギグエコノミーが広がる中で、セーフティ・ネットを整えるという点から政府が果たすべき役割は大きいですが、企業としても、労働組合に対する捉え方を変えて、経営にとっての重要なステークホルダーと位置付けて向き合っていくことが重要です。

 

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Photo by Clay Banks on Unsplash

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