WBAが生物多様性に関するメソドロジーを公開 指標化に向けて

2022 / 2 / 28 | 執筆者:岡山 奈央 Nao Okayama

Image by ejaugsburg on pixabay

 

以前にこちらの記事でもご紹介したことのある、World Benchmark Alliance(WBA)が、自然と生物多様性ベンチマークのメソドロジーに関するドラフトを公開しました。2022年1月12日~3月2日の間、ステークホルダーからのフィードバックを受け付け、2022年4月に最終化されたものが公開される予定です。

自然・生物多様性についてはビジネス界においても急激に関心が高まっているものの、その指標化に向けては未知数である部分が多く、何から取り組んで良いのかわからない、という声をよく耳にします。今回のWBAの原案は企業がこれからサステナビリティ戦略に自然・生物多様性を取り込み、変革を行っていくための第一歩として、参考になる部分も多いのではないかと思います。

WBAはガバナンス、生物多様性と環境マネジメント、社会的包摂とコミュニティへのインパクトの分野について、22の業界における、最も影響力のある1,000社についてベンチマークを行う予定です。

評価の指標としては、以下のような項目が挙げられています。

ガバナンスと戦略(15%)

・サステナビリティ戦略
・サステナビリティ戦略の説明責任
・ステークホルダーエンゲージメント
・ロビー活動とアドボカシー
・サーキュラーへの移行

生物多様性と環境マネジメント(60%)

生物多様性のマネジメント

・生物多様性へのインパクトおよび依存に関するアセスメント
・生物多様性に関するコミットメントと目標
・重要な地理的地域および生態系
・重要な種
・侵略的外来種

生物多様性損失の原因

・GHGおよびnon-GHG排出
・生態系の転換および回復
・土壌の健康状態
・取水、水質
・有害廃棄物、有害物質およびプラスチックの使用と廃棄

社会的包摂とコミュニティへのインパクト(25%)

・清潔、安全、持続可能な環境の権利
・土地の権利
・水と衛生の権利
・先住民族の権利
・中核となる社会指標

(以上、仮訳)

そして、上記それぞれについて、指標、根拠、要素が記載されています。企業は自社のバリューチェーン全体で、これらの項目について自社の事業による影響をアセスメントし、改善に向けて今後の取り組みを検討していく必要があります。

 

このメソドロジーは主に自然と生物多様性に主眼を置いている一方で、こうした取り組みは「人を中心」に考えるべきとあり、人々の権利および尊厳を基本的な出発点として考えている点が特徴的です。評価全体の25%は「社会的包摂とコミュニティへのインパクト」の評価となっており、企業による自然・生物多様性への取り組みは人々やコミュニティの権利が尊重されて初めてその効果を発揮し、持続可能性を実現できるという点が強調されています。

先日、欧州委員会が発表した環境・人権デューディリジェンス指令案でも、生物多様性について言及されていましたが、自然・生物多様性を含めた”環境”と”人権”を同等に重視する流れがグローバルで強まっていることを反映しているのでしょう。これまで、環境問題を考える際、先住民の権利など、ないがしろにされがちであった重要なステークホルダーの権利についても、改めて認識する必要性が高まってきているといえます。

いずれにしても、生物多様性への取り組みは今後、後戻りすることはないでしょう。そして、そうした影響は日本の企業、社会にも数年のうちに確実に及んできます。

今回のWBAのドラフトにもあるように、自社のバリューチェーンにおける生物多様性のインパクトおよびどれだけ依存しているかについての特定が、取り組みの大切な第一歩になります。日本企業も、経営戦略にいち早くそうした視点を取り入れ、本質を見据えた取り組みを始めることができるよう、期待しています。

(岡山奈央 エコネットワークス  シニアアナリスト)

このエントリーをはてなブックマークに追加

Sustainability Frontline もっと学びたい方へ

この記事で取り上げたテーマについてより詳しく知りたいという方は下記よりご連絡ください。より詳しい内容理解 / 勉強会でのライトニングトーク / 社内セミナーでの話題提供など、一緒に学びを深める機会を作っていきたいと思います。

お名前
メールアドレス
企業名、団体名
詳しく知りたい内容など

プライバシーポリシーに同意する