「アニマルウェルフェア」がグローバル課題解決のカギに

2022 / 1 / 31 | 執筆者:宮原 桃子 Momoko Miyahara

Photo by mhp via AdobeStock

最近、日本でも耳にするようになってきた「アニマルウェルフェア(動物福祉)」。飼育下にある動物の幸せや人道的な扱いを実現するために、苦痛やストレスのない環境や方法で飼育することを意味します。食品、動物実験に関わる化粧品・医薬品、毛皮などのファッション素材、動物園などのエンターテイメント、ペット産業など、さまざまな分野に渡る重要なテーマです。しかし、日本は世界的に見ても、アニマルウェルフェアの認知や取り組みが遅れています。

なぜ今、アニマルウェルフェアに取り組むべきなのでしょうか。グローバル課題の観点から紐解きます。

「動物の権利」を尊重する

アニマルウェルフェアを考える前に、まず押さえたいのが「動物の権利(アニマルライツ)」です。本来動物は、人間に支配されることなく、生態や欲求、行動に基づいて「その動物らしくいられる権利」があります。一方アニマルウェルフェアは、人間による支配・管理を前提にしながらも、飼育下にある動物への倫理的責任に取り組むものです。本来的な動物の権利に立ち返れば、次のアニマルウェルフェアの基本原則は、ごく自然な考え方として捉えることができます。

  1. 飢餓と渇きからの自由
  2. 苦痛、傷害又は疾病からの自由
  3. 恐怖及び苦悩からの自由
  4. 物理的、熱の不快さからの自由
  5. 正常な行動ができる自由

日本の養鶏場における過密飼育。ニワトリ本来の高い所に止まる・砂浴びするなどの欲求・習性は満たされず、アニマルライツは尊重されていない。©アニマルライツセンター

人獣共通感染症を食い止めるために

アニマルウェルフェアは、感染症拡大や気候変動といったグローバルな課題解決のカギも握っています。人の感染症の6割は「人獣共通感染症」で、近年の新たな感染症の75%が動物由来です。究極の3密といえる過密・ケージ飼育は、ウイルスが進化しやすい環境を生んでいます。国連も、そのリスクに警鐘を鳴らしています。

こうした中で、人・動物・生態系の健康を、それぞれにつながった一つのものと捉えて取り組む「ワンヘルス」という考え方が、世界に広まり始めています。アニマルウェルフェアは、ワンヘルスの実現に欠かせない要素です。

過密飼育やバタリーケージ飼育が多い日本では、鶏肉のサルモネラ菌汚染率が非常に高い©アニマルライツセンター

気候変動対策にもつながる

過酷な飼育の背景には、大量消費・大量生産という課題があります。アニマルウェルフェアの実現には、消費者が肉の大量消費をやめること、畜産農家がコストを抑え生産を最大化する「集約畜産/工場畜産」から脱することが必要です。

大規模な畜産業が、放牧や飼料栽培のためにアマゾンの森林破壊の主な原因となっていることを考えると、集約畜産からの脱却を促すアニマルウェルフェアは、気候変動対策にもつながっていると言えます。

増加の一途をたどる畜産動物の数 ©アニマルライツセンター

今後日本でも、アニマルウェルフェアをサステナビリティ課題の解決にもつながる重要なテーマとして、捉えていく必要があります。エコネットワークスでは、「NPO法人アニマルライツセンター」代表理事の岡田千尋さんを招き、国内外の現状や取り組みを学ぶ勉強会を開催しました。開催レポートも、ぜひお読みください。

宮原桃子/ライター)

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